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オレンジ兎とワルツ

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さて。
ラビミラ小話です。相変わらず、ラビがおバカです。何でだろうと考えてみるに、書いてる人間以上に賢い登場人物を書けるわけがないという結論に達しました。(当然)

よろしければ、続きをどうぞ。

 
 
オレンジ兎とワルツ


アレンは黒の教団の一般図書室に用があった。しかも、割と人の出入りがない数学関係のコーナーに。
なぜかといえば、(室長補佐を務めるリナリーにとっては)簡単な質問の答えを明日までに用意しなければならないからだ。(そうなるに至った経緯は今回の話とは関係ないので別の機会に譲る)

目指す本のありそうな場所を司書カウンターで教えてもらい、背の高い本棚に囲まれた小部屋のようなそこにたどり着いた白髪の少年は、目に飛び込んできた光景に動きを止めた。師匠が師匠なので驚きはしない。だからといって親しい仲間が当事者であれば愉快な気持ちになるわけもない。
それは、単刀直入に言って、とても妖しい光景だった。

彼のよく知る年上の女性エクソシスト....名をミランダという....が、ソファの肘掛に頭をのせて目を閉じていた。彼女の正面のテーブルには、開かれた幾何学の本。空間をイノセンスの発動対象とする彼女が学ぶに相応しい分野といえる。が、大抵の人間にとって睡眠薬とするに適した本でもある。
その傍ら、これまた彼のよく知るオレンジ髪の隻眼の青年....本当の名前は知らないが、今現在はラビと名乗っている....がしゃがみ込みミランダの耳へと寄せた自分の口の周りを手の平で囲み、何やらボソボソやっている。小さな子どもだったなら、内緒のお喋りでもしているのかしら、微笑ましいわね、ですむ場面なのだが。
「う、うぅ、う....」
微笑ましいどころか、ミランダはうなされていた。眉根を寄せ固く握りこんだ手で胸を押さえている。その様は、師匠の愛人である妖艶な美女を見慣れたアレンの目にも艶めいて映った。
そして、万年不眠症の彼女がようやっと得たであろう安らかな眠りを、何だってラビが妨げているのかと訝しむ。何となれば彼の耳が拾ったラビのセリフがあまりにあまりだったので。

「ミランダは~、ラビ君が~好き~」
「....何やってんですか」
未来のブックマンともあろう人が。

アレンは露骨に眉を顰めて見せたが、見せようとした相手はひたすらミランダを眺めているので意味がない。一旦手を下ろしミランダの寝顔を一心に見詰めながら、幾何学の本に重ねるようにして置かれた雑誌を後ろ手に指し示してみせる。

「や~、その雑誌に睡眠学習ってーのがのってたんさ。眠ってる時に耳元で何事か囁いてやると、その内容を覚えるんだってさ」
「あぁ。師匠がボクにピアノの弾き方を(無理矢理)身に着けさせた方法ですね」
「や、それはどうか知らんけど」
言ってラビはオレンジ頭を傾げる。ミランダはといえばラビの声が止んだからだろう、何とも穏やかな寝顔。するとその様子を隻眼に収めたラビは、ただでさえ垂れている目尻を更に下げた。
見ているアレンが思わず照れてしまう。

アレンより3つ年上のこの青年が、彼より更に7つ年上の彼女に好意を寄せているのは教団内の暗黙の了解事項となりつつある。気づいていないのは、好意をよせられている当の本人であるミランダと世事に疎いアレイスターくらいか。
リナリーからブックマンの宿業を知らされているアレンとしては、彼の気持ちの成就を素直に応援する気になれない。とはいえ、短いながら寝食を共にし戦いでは背を預け合い、兄とも親友とも思い定めているこの青年の気持ちを無碍に否定する気にもなれない。
頭を悩ますアレンと比べ、もっと悩むべき立場であるはずのラビは至って気楽(そうにアレンには見える)に思い人の周囲をウロチョロしている。
不公平ではなかろうか。
思えば口も尖ろうというもの。
加えて首だって傾いてしまう。
こんな詐欺まがいの方法で思いが叶ったとして、ラビは嬉しいのだろうかと。

そんな疑問が雰囲気に滲み出したようで、ラビはこちらを一瞥しヤレヤレと言いたげに口を開く。まるでアレンを諭すような口調だ。
「ばーか。睡眠学習なんて、まだ科学的にその効果が証明されたもんじゃねぇんさ。だったら、単なるおまじないと同じ。好きな相手の名前を消しゴムに書いたり枕の下に宝船の絵を置いたりすんのと変わんねーの。そんなアヤフヤなものにすら一縷の望みを託したくなるこの健気な男心、分かんねーか....」
「分かるわけないでしょ」
一刀両断。
呆れてみせつつ。
いい機会かもしれないとも思う。
どうにも腑に落ちない、彼の態度について尋ねてみようか。
改まったアレンの態度に呼応するかのよう、ラビを取り巻く空気がピリリと引き締まった。

「真面目な話、ラビはブックマンでしょう。恋愛なんて禁忌の最たるものじゃないんですか?」
「そりゃ、オレが好きになったらな? でも、オレ以外の人間がオレを好きになる気持ちは止められんさ、どんだけ枠外の存在といったって透明人間になるわけにもいかんし」

空気が変わったと感じたのは単なる気のせいだったようだ。半眼になって、目の前の青年をねめつける。
「....目一杯、働きかけてる気がするんですが」
「だから、単なるおまじないに過ぎないって言ってんだろ。それでミランダがオレを好きになったんなら、そりゃオレのせいじゃなくて元々そういう運命だったってことじゃね? それにどういうわけかじじい、ミランダに対して割と当たりが柔らかいんさ。リナリーにもだけど。フェミニスト気取ってるつもりかね、あの年で」
常の如く、ヘラリと笑う。この場に老爺がいなくてよかったとアレンなどは思う。お決まりとはいえこの場で師弟のドツキ漫才が始まったりしたら、またもやミランダの安眠妨害になるところだ。既に、このオレンジ頭の万年常春男に邪魔され気味ではあるが。

真意を質すのを諦めここに来た本来の理由である本を探そうと背を向けたアレンの耳に、ポツリと言葉が届いた。それはまるで、懺悔のようで。

「オレもさ、本当にいいのかなぁって恐くなる時があるよ」
黙っている。多分、同意も否定も彼は望んでいない。
「でもさ、ミランダが前に言ったんだ。『どれだけみっともなくてもどれだけ情けなくても自分くらいは自分の気持ちを認めてあげないと、先に進むことは出来ないのよね』て。ま、オレに向けての言葉じゃなかったんだけどさ」
ひたすら黙って、手を本の背表紙に滑らす。面と向かって弱音を吐けないところは、そういえば自分も似たようなものだった。
「オレのミランダへの気持ちは、....甘えが随分と混じってるんさ。みっともないとは違うけど、手前勝手なことには変わんなくてさ。参るよなぁ、こんなときくらい観察すんの止めとけって思うのに。こういうのが未熟だってじじいに言われるトコなんだろうなぁ」

自覚があって何よりです。
言ってやれば、少しは気を軽くしてやれるんだろうか。

定まらない考えのまま振り向けば、ラビがミランダの髪にそっと触れていた。まるで、触れた箇所から体温で溶けだすんじゃないかと恐れているようなおっかなびっくりの手つき。
泣くかと思った。
丁度その時。
ミランダが小さな声で呟いた。うなされているようでもあったが、大事なのはそこではなく。
「う、うぅ、ミランダはラビ君が....好き?」

この時のラビの喜びようといったら。
とばっちりとしてオレンジ頭の青年から首を抱え込まれ頭をバシバシ叩かれる。じゃれるような反撃をしたいのはやまやまだが、それをすれば更にミランダの仮眠を危ういものにしてしまう。
しょうがないと諦め、隙だらけのわき腹に鋭い肘鉄をお見舞いして本探しへと戻った。

それはともかくとして。
ラビの思いが叶うのは、それほど遠い未来ではないかもしれない。
その時自分はさて、祝福するべきなのか、怒るべきなのか。

頭を悩ます問題が一つ増えたことに、アレンは小さくため息を吐いた。

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