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自分の書いたの改めて見直して、ラビミラはひたすらベタベタしてるお話がないことに気づきました。確かに、扱いが悪いかも。
と、ラビ君に対して反省しながら書いたのが以下の短い話。
よろしければ、続きからどうぞ。
陽だまりの唄
思い出したように温かな風の吹く、木漏れ日にまどろむ教団中庭。
石造りのベンチにクッションを並べ立て、茶色い癖っ毛と華奢な体の持ち主を座らせその太腿に頭を預けるオレンジ頭の青年が一人。
白髪の最年少エクソシストと黒髪チャイニーズの少女エクソシストの二人が任務のため教団を離れているからこそ出来る贅沢を満喫し、緑の隻眼の持ち主はこの上なくご機嫌である。
その筈なのだが。
おかしい。
ラビは、ミランダに預けた頭を捻る。
この体勢になるまでの彼の苦労ときたら、並大抵のものではなかった。師匠であるブックマンが街に下りる予定を事前に調べ上げ、何かと彼女を気遣うアレンやリナリーが任務で出かけるのを見計らい、何より、こんなこととんでもないと死にそうな顔で力の限り抵抗するミランダ自身を宥めすかしてようやっと叶った念願の膝枕。
この時のミランダは涙目になって顔を赤くしたり青くしたり、手足をバタバタさせたり無駄と分かっていながら部屋の扉にしがみついてみたり、それはもう言葉に出来ないほど可愛らしかった。こんな機会は滅多にないのだから、むしろ昼間っからベッドに押し倒しちゃった方がいいんじゃないかと思うほど。
そんな邪まな考えを、いやいやベッドの方は夜になればアレンやリナリーがいても二回に一回はできるのだしとねじ伏せて、頭を膝の上にのせている間中のミランダの恥じらいと慌てっぷりと温かな体の感触を想像し、ラビは心弾ませていたわけだ。(どちらがより邪まな考えなのかは神のみぞ知る)
しかし、自分が膝枕している相手の考えを知ってか知らずか。(間違いなく知らないだろう)ミランダは、ラビの髪を梳いては、
「サラサラでうらやましいわ」
と微笑む。
ラビの手をそっと持ち上げて、
「ラビ君の手は大きいのね、指も長いし。ピアノとか弾いたら格好いいんじゃないかしら」
と細い自分の指と節くれだった青年の指を絡ませる。
挙句、彼の背中を撫でながら囁くような小さな声で子守唄まで歌いだす始末。その仕草には何ら艶めいた意図も匂いも感じられない。
正直、彼女からラビに触れてくれるのは嬉しい。いつだって互いに触れ合うのは専らラビの努力により、キスも抱擁も強引な年下の青年から仕掛けなければ百年たっても実現しない。
だから、ラビが何も言っていないのに、何も態度に表さないのに、ミランダがラビの望んだように髪に触れ指を絡め唄を歌ってくれるなんて、まさに青天の霹靂、棚からぼた餅、バチが当たっても悔いはない。
しかし。
よくよく吟味するに、先程からのミランダの言動は、恋人というよりむしろ弟や子ども、自分には決して害を与えないと信じきっているからこそ零れてしまう、無意識の発露のようにラビには思われる。
物は試しと、腕を彼女の細い腰へと巻きつけてみる。ビクリと華奢な体に力がこもる。
が次の瞬間、背中を撫でていたミランダの手は労わるようにラビの頭へと戻る。熱を測る時のように額を少し冷たい指が掠めた。
「どうしたの? ラビ君」
歌っていた唄を途中で止めて、そんなこと言いながら。
ラビは目を上げて、ミランダを見上げた。
惜しげなく与えられるこの女(ひと)の微笑みは、冬の陽だまりに似ている。凍てついた空気を追いやるでなく、誰もが足を滑らせる氷の張った水溜りをあっという間に溶かすでなく。寒さに強張った頬と肩をほんの少し緩め、固く凍った大地を気づかぬうちにぬかるみへと変える。
「ミランダ嬉しそうさ。嫌じゃなかったん?」
「それはやっぱり恥ずかしいけれど。でも、いつもラビ君に助けてもらってばかりでしょ、私。それがこうやってるとチョッとだけ....何かラビ君にできてる気がして。おかしいかしら」
「ん~ん。おかしいとしたら、いつも助けてもらってばかり、てとこかさ。今だけじゃなくいつだって、ミランダはオレを助けてくれてる....あんがと」
「そんなこと! やだ、ラビ君、そんなこと、言わないで。私、どうしたら...」
ゴシゴシと目元を指でなく袖で拭うあたり、ミランダらしい。上げていた目線を下ろし、ラビは腰にまわしていた腕の力を少しだけ緩めた。毒気が抜かれるとはこのことだ。
ミランダは気づかないんだろうか、ラビがちょっと手を伸ばしたらその小さい顔は簡単に眼帯を付けた顔とくっついてしまうことを。青年がちょっとその気になっただけで、このか弱い体は意外とたくましい体の下に組み敷かれてしまうことを。
彼らが座っている場所は光あふれる場所ではあるけれど、割と人の目のない場所でもあることを。
全く気づいてないのだろう。
クスリと一つ笑みを浮かべる。ラビの体がポカポカ温かいのは、日の光を全身に浴びているからだけでなく。
再び流れ出す柔らかな唄に耳をくすぐられながら、未来のブックマンは幸せな気持ちで目を閉じた。まぁ今日くらいは自分も知らなかったことにしておこうか。年下の余裕というやつで彼女のされるがままになりながら。
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