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二人のロミオ、とジュリエット 19

二人のロミオ、とジュリエット18からの続きです。
粗筋→ミランダさんを誘拐したティキさんでしたが、ラビ君に取り戻されました。(以上)

今回の副題は「Tに関するお題」より。
エピローグその2、でもって伸びに伸びたこのシリーズもラスト!
お付き合い感謝v



勿忘草

金の瞳は黄昏(たそがれ)る


オーストリア、リンツェン。
AKUMAが周辺で目撃され、一夜にして半壊した公園。
この一角に据えられたベンチに、黒いシルクハットを傍らに置き、男が両腕を背もたれに預けダラリと腰かけている。タバコを吸いながら空を見上げる彼の隣では、ショートカットの髪を好き勝手に跳ねさせた少女が膝上十センチ相当の短いスカートの裾から覗く細い脚をブラブラ揺らしていた。

「ティッキー、この公園、お気に入り~? 結構、このベンチで黄昏てるよねぇ」
「それは、気に入ってるってことになんのか?」
「ふふ~、千年公、そんなに怒ってなくてよかったねぇ」
「あったりまえだろーが。もらったモンはオレのもの。オレのものをどうしようと怒られる筋合いじゃ...」
「あー、千年公!」
「うわ、すんません! モノは大切に...おい、ロード...?」
「きゃはははは! でぇ? モノを大切にするティッキーは、この公園も大切にしなきゃなんじゃない?」
「ん~、でもなぁ。バカなエクソシストのせいで、あちこちヒデェことになってっからなぁ。壊そっかな。直すの面倒だしカネかかるし」
「えぇ~何でぇ? ボク、結構気に入ってるんだけどなぁ」
「マジかよ。つーか、気に入ってんの、オマエの方じゃん」
「マジマジぃ」
「そーかぁ。...う~ん、じゃぁまぁとりあえずこのままにしとくか」
ティキは仰け反らしていた背を起こし、短くなったタバコを地面に落とした。靴の裏で踏みにじる。
「壊すのにもカネがかかるもんな」
「ティッキーってば、貧乏性ぉ」
呆れたような言葉を最後に、明るい笑い声が遠ざかる。ティキの他に興味をひくものでも見つけたのだろう。ベンチの背後から影のようにルル=ベルが歩み出て、彼ら一族の長子の後を追った。

近寄りすぎず、遠ざかりすぎず、ティキと他のノアたちの距離はいつもこんな位だ。
大切な家族。
生まれて初めて手に入れたこの存在を、彼は死ぬまで守り続ける。
思って、少しだけ背中を丸める。膝の上で両手を組み合わせると、夕日に赤く染まる壊れかけた公園が目に映った。
すると、思考はなぜか半月前に終わらせたママゴト遊びの相手へと戻っていく。

あれから何度も繰り返し考えた。
四年前の雨の日に。
ティキがミランダを抱きしめていれば、彼女の髪は長いまま彼の肌は白いまま、あの古ぼけた小さな街で二人、ささやかな幸せというやつを紡いでいられただろうか。

それとも、一月前のあの夜。
拒む声など気にしなかったら、今も金銀で飾られた檻の中に貧弱な女のエクソシストを閉じ込めていられただろうか。

考えなくたって分かる。
無理だ。

いつか必ずティキはノアに目覚めたし、ミランダはイノセンスに選ばれた。遅いか早いかの違いだけ。
そして、方舟に乗ることができるのは真の神に選ばれた者だけ。偽りの神に選ばれたミランダを、ティキが共に連れて行くことなどできはしない。
ノアとエクソシストの恋は実らない。
かつてティキがロードに言った言葉だ。
珍しく自分が口にした真実を、ティキは改めてかみしめる。

いつだって、背を向けるのはティキだった。
その背をミランダはいつまでも見送って、たまにティキが振り返ると、必ず嬉しそうに笑った。その笑顔を見ると、ティキの胸には灯りがともった。

いつも、選択肢はティキが握っていた。
ブックマンJr.と戦わないと決めた昼、ミランダが足を挫いた夜、公園で彼女を見つけた夕暮れ。
四年前の彼女の部屋。

しかし、選択肢がいくつあろうと、つかみ取れるのはただ一つ。
そうして手の平に残ったものが、手にした人間にとっての変えられない真実となる。



益体もないこと、何度考えてんだ。少し疲れてんのかもな。
呆れ混じりのため息を吐きながらティキは目を閉じる。ぼんやり灯ったガス灯の明かりを目蓋の裏に映して。
けれど、そうだな、もしメフィストがティキの前に現れたなら。
気まぐれなノアは夢想する。
彼が望むのは四年前の雨の日だ。
そして、ティキへの思いに濡れたダークブラウンの瞳を見つめて囁くだろう。

「Verweile doch... Du bist so schön.」




後日談。
このシリーズのラビ君は、心配性になりそうだ。ヘタレ度も(心持ち)少な目? おバカ度はかなりアップ。
ブックマンになっても、何かってーとミランダさんとこ帰ってきて、浮気してないかとか心変わりしてないかとか変な男につきまとわれてないかとか、色々尋ねて怒られてればよい。

全部が終わった後もティキさんが生きてたら、時々ふら~っとミランダさんとこ寄ってもいいかも。で、そんな時に限ってラビ君がいるからゆっくりできない(笑)
からかい半分にミランダさんへちょっかいかけることはあっても、恐がらせるようなことはしない(できない)だろう、このティキさん。
ロードちゃんの保護者orルル=ベルさんのご主人様、という名の被扶養者になってお尻にひかれてるんだけど、漂々と流れ続けてる感じで。




最後のティキさんの言葉は、Wikiペディアのファウストの項からそのままもらってきました。独語。超意訳して「時よ留まれ、おまえは何より美しい」とでも。

書いてる人間はメフィストではありませんが、自分で勝手に作ったティキさんとミラさんの過去話が非常に気に入ったので、そのうちここら辺だけ抜き出してまとめたいと思ってます。時を留めるような感じで。(そうすると、エクソシストもノアもイノセンスも登場しないパラレル極まりないお話になりますな)
その時こそハッピーエンドを彼らに。
や、私的にはこれで十分ハッピーエンドなんですが。

とにかく、一番最初のミラさんの回想と最後のティキさん独白が書きたくて書きたくてしょうがなくって始めたこのシリーズ。
長く冗長になったお話に、最後までお付き合い頂き感謝!

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