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二人のロミオ、とジュリエット 13

二人のロミオ、とジュリエット12からの続きです。
粗筋→ミランダさんとラビ君が任務で公園にいました。ティキさん+AKUMA登場、戦闘終了後、ミランダさんはティキさんにさらわれてアチコチ連れまわされていました。のをラビ君たちが追っかけています。(以上)

今回の副題は「Mに関するお題」より。



勿忘草

刻(とき)の魔女 2


18xx-4年
記録的な大雨の中を出かけ、夜になって住み込みで働く勤め先に戻ったティキは、自分の寝床のある仕事場の裏口の鍵を開けようとして、鍵がかかっていないことに気づいた。
「おーい、親父? じゃなかった、師匠! 帰ったぞ~。鍵もかけねぇで無用心だろーが...?」
明かりの漏れる部屋のドアをくぐる。いつもだったら、...これまでの3ヶ月間はいつだって、少し丸めた背中が彼を迎えた。彼の師匠が、黙々と小さなネジと歯車を組み合わせていたり、針を磨いていたり、ゼンマイを巻いていた。
が、この夜、彼を迎えたのは時計職人の妻の小さな背中だった。ティキの声に、彼女はクルリと振り向いた。頬に大きなペンタクルが浮かんでいる。異様な気配を感じ、後じさったティキの足が何か硬いものを踏みつけた。
ギョッとして視線を落とす。転がる男の体。更に目を動かすと、対峙した女性の足元、あごひげに包まれた男の顔が虚ろな目でこちらを眺めていた。

これまでのティキだったら、この時点で一も二もなく踵を返し、次の瞬間には背後からAKUMAの弾丸を受けて殺されていただろう。何しろ、兵器なのだ。特殊訓練を受けたエクソシストならいざ知らず、常人に反応できる速度ではない。
しかし、脳裏に姿がよぎった。涙に濡れた大きな瞳と長い長いダークブラウンの巻き毛の持ち主の、細く頼りない肢体が。
一瞬のためらい。
そして、メガネの表面に女の細腕から伸びる銃口が突きつけられた。

死が直前に迫っているのを彼は悟る。自分の生死一つ選ぶことのできない不条理さに、いっそ笑いがこみ上げる。
ティキは左手を無意識のうちにかざしていた。目の前の存在がもたらす自分の死を、彼は望んでなどいない。全身全霊をかけて拒む。

哄笑。

カツリ
踵を鳴らして、長く大きなシルクハットを被った恰幅のよい紳士が、床にあぐらをかいて座り込んだ青年へと歩み寄った。少し遅れて、短い髪を好き勝手に跳ねさせた少女が踊るような足取りで続く。彼らの傍らには、粉々になったメガネの残骸と、壊れた人形のように四肢を投げ出した細く小さな女の遺体。床一面に撒き散らされたネジと歯車。
黄色い光を灯すランプがジジジと音をたてた。

「おや、快楽メモリーの子でしたカ♪ 目覚めの気分は如何デスカ♪」
「最っ高♪」

嘘偽りのない気持ちだった。喜びに声が弾む。
これから、ティキに選べないものなど何もない。全て、彼の望むまま。考えれば考えるほど楽しくて仕方ない。
ふと、少女がしゃがみ込んで、ティキの顔を覗き込んだ。

「あれぇ、泣いてるのぉ? うれし涙ってやつぅ?」
「ん、そうかも」

口ではそう言ったが、本当はティキには分からなかった。頬を流れる涙の理由など。


***

「と、いうわけでだ。オレがノアになったのはミランダのせいなんだから、責任とってもらわないとな」
「今の話の何がどうなって私のせいなんですか! 責任って、何をどうしろというんですか!?」
「ミランダのこと思い出さなかったら、オレは人間のまま殺されてたし。そもそもあの夜、ミランダがオレを引き止めてりゃ、オレはAKUMAになったおかみさんに会わずにすんでたかもしんねぇじゃん?」
「いいがかりです! 詭弁です!」
「ま、昔の責任は、今の自分の飲み食いした分返し終わってからの話か。一体いつになるんだろうなぁ。ほい、昨日ミランダが壊した皿の代金。全然、借金減ってる気がしねぇんだけど? わざと?」
「そんなわけ、あるはずがないでしょう!」

言葉尻に嗚咽が混じる。自分の不器用さに落ち込んでいるのかもしれない。全く、見ていて飽きない存在だ。
今日も今日とてミランダの膝に頭を預けながら、ティキは笑いが止まらない。

ミランダが足を挫いた翌日から、ティキは一日一回、必ず彼女を屋敷周辺へと連れ出すようになった。朝早くから夜遅くまで、痛む足をおしてこまネズミのように働く彼女を労わっているわけでは、もちろんない。
単なる気晴らし、いっかな彼になびかぬミランダへのささやかな意趣返しである。

目をこらせばかろうじてティキの屋敷が見える。原っぱの真ん中に広げた、三メートル四方の麻の敷布。この上にミランダを座らせ、「抱き枕になるのと膝枕をするの、どっちがいい?」とティキはいつものように尋ねた。
ミランダは目を白黒させ視線を泳がせ逃げ道を必死に探し、そんなものどこにもないと悟ってこれまで同様、膝枕を選んだ。
こんなやりとりを、もう二週間続けている。いつまで続くのか、ミランダはともかくティキにも見当がつかない。つかなくても良いような気がする。

ミランダの膝の上から、落ち着かな気に指を組み替え視線をさまよわせる彼女の様子と青く晴れた空を見上げて、ティキは微笑む。
「ミランダ、オレなら永遠をやれるよ」
ソロリと指をミランダの頬に滑らせ、顔にかかった髪を耳へとかけてやった。見上げた顔には言ってる意味がわからないと書いてあった。ティキは苦笑する。本当に察しの悪い女だ。
「ミランダの可愛い年下の恋人、ブックマンJr.だろ? アイツはいつかミランダの前からいなくなるよ?」
白い顔から血の気が引く。思ったとおりの反応に満足しながら、どこか苛立たしい気持ちもある。敵失に乗じるのはゲームの定石だが、その前提としてあの小賢しいジュニアと自分が同じ土俵に立ってるのを認めることになる。

「ミランダがノアのオレが嫌だってんなら、ミランダの側に居る時だけは白い方の...四年前のオレに戻ってもいい。イカサマ少年にオレの中のノアを壊されてから白に戻れなかったんだけどさ、ミランダといると上手く白に戻れる。この二週間で分かっただろ? オレ、ずっと白だっただろ?」
「ティキさん、もし無理をされてるんでしたら、どうぞお構いなく。というか、そんな気遣いするくらいなら、この頭をどけてくださった方が私は」
「四年前、言ったよな? オレ、ちゃんと手順踏むって。きちんと誓うって。今がその時だと思わない?」
「ティキさん、お願いですから人の話を聞いてください。私はエクソシストでアナタはノアです。何を誓うと言うんです。そんなことより、この手は何ですか。さっきから私の腰に回っててくすぐったいんですが」
「不感症のミランダでも感じるんだ? 気持ちいい? もっといいコトしてやれるよ? ミランダが望むんならいくらでも」
「だから! 私はティキさんに何も望んでません! 何でそんなこと言うんですか! 私は捕虜なんでしょう? 敵なんでしょう? アナタの嫌いなイノセンスに選ばれた気に入らない玩具なんでしょう? だったら!」

ミランダがポロポロと涙を零す。ティキは袖でその涙を拭ってやる。こんな風に泣かせることができるようになっただけ、二週間前よりマシになったというのに。
「あぁ、全く。ミランダは本当に運が悪いんだな。せっかくいいトコだったのに」
「何がいいトコなんです...か?」
人影がティキとミランダの上に落ちた。
鼻をすすりながら、ミランダが顔を上げる。驚きに目を見張った後、喜びに頬を染める彼女の表情をティキは見詰めていた。知らず、彼女の腰に回した腕の力を強める。

そして。
嫌々ながら、ミランダの視線を追って目をノロノロと上げる。
最初に黒いブーツ。次いで黒いズボンに包まれた脚。腰に二つ巻かれた黒いベルト。間を置かず目の前に突きつけられた黒い槌。太陽を背にして、明るい色の髪の青年が、ティキのすぐ側に立っていた。
弾んだ声が降ってくる。
「よ~やっと、チェックメイトさ。さーってビン底メガネのエロボクロ。さっさとミランダから離れやがれ」




書いてて気づいたけど、ティキの目覚めのシーンは私にとっちゃ聖域みたいなもので、手を出したのはマズかったのかもしれん...。力量不足だけが目立つ(涙)
でもって、ティキさんの言動は間違いなくセクハラです。ミランダさん,
ごめん。
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