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二人のロミオ、とジュリエット 12

二人のロミオ、とジュリエット11からの続きです。
粗筋→ミランダさんとラビ君が任務で公園にいました。ティキさん+AKUMA登場、戦闘終了後、ミランダさんはティキさんにさらわれてアチコチ連れまわされていました。のをラビ君たちが追っかけています。(以上)

今回の副題は「Mに関するお題」より。

勿忘草

刻(とき)の魔女


「触らないで下さい!」
「大丈夫だって。少し痛いだけだから。早いか遅いかの違いだろ? ミランダだって、嫌なことはさっさとすませたいんじゃねぇの?」
「アナタが! それを言うんですか!?」
「それに、選んだのはミランダだし。んじゃまあ、遠慮なく」
「ティキさん、止め...!」
ティキが長いスカートの中、慎ましく縮こまっていたミランダの足首を無造作に掴みあげ、日の光の中へと引っ張り出した。だけでは終わらず、触れるか触れないかの強さで足裏をなでる。膝から下の全てを走る痺れにミランダは悲鳴をあげた。
「ダメです、ティキさん、放してくださ...!」
「ミランダ、ただでさえ血の巡り悪いのに膝枕なんてしたらてき面だろ。だからおとなしく抱き枕の方を選べばいいのに」
「いくら私がバカでも、慎みくらいは持ってるんです」
「んなこといって、夜は何も言わねぇじゃん」
「人が! 眠ってる時、勝手にベッドに入ってきて! 勝手に抱きかかえるのはフェアじゃありません!」
「確かに、不思議だよなぁ。こーんな貧相な体で手足だって冷たいのに、何だってオレ、ミランダ抱いてると眠くなるんだろ」
首を傾げる男に、ミランダは必死に抗議するが柳に風。その間にも、彼の長い指が強張ったミランダの足の指を一つ一つほぐしてゆく。その度に、ミランダは眉を寄せ肩を震わせ身を捩るが、ティキは全く頓着しない。鼻歌でも歌いだしそうな楽しげな風情で、指を動かし続ける。

あの夜...ミランダが夜会で足を挫いた日から、ティキはミランダを世界各国の社交の場へと連れまわすのを止めた。
代わりに、朝早くから夜遅くまで働かせるようになった。

忘れもしない、生まれて初めて男の腕の中で一睡も出来ずに迎えた朝。
パチリと目を覚ましたティキは、とろけそうな笑みを無精ひげの伸びた顔に浮かべミランダにキスをしようとした。もちろん、ミランダはなけなしの腕力の限りで相手を押しのけた。

みるみる不機嫌になった男は、寝不足でフラフラする頭を抱えたミランダ共々起き上がり、足を挫いてまともに歩けない彼女を引きずるようにして台所というより厨房と呼んだ方がいいような広い調理場へ向かった。
「働かざるもの食うべからずってな。ミランダはオレから何ももらいたくないようだから、その分、働いて返してもらおっか」
それはミランダの望むところだ。
「昨夜も言った筈です、今の私には少しですけど貯金があるんです! それを引き出しに行かせてくれれば、すぐにでも...」
目の前にピラリと紙が突きつけられた。思わず受け取ったミランダは、紙面に記された数字を見て腰を抜かした。今まで見たこともない桁の金額が書かれていた。
「ミランダが着た服、身に着けた宝石、食った料理の代金。これは昨日一日分。あと...何枚あったっけか? ミランダ、ここ来て何日になる...ミランダ?」
ティキは真面目に訊いていた。本当にミランダがこの屋敷に来てから何日間たったのか、覚えてないようだった。が、この時のミランダに、他人を気にする余裕はなかった。震える両手で請求書を目の前にかざした。

この金額×14日分? それを払えと?
正確な計算は恐ろしくてできなかった。

「ティティティティキさん、あの、お借りした服は、全てお返しすると」
「破れて汚した服返されてもね?」
「アクセサリー類は全て無傷で」
「そうだな、どっかに落っこちてるはずだな。今、まともに残ってるのは三つくらいか」
「食事は! 生きてくために必要最低限な筈でその請求までされるのはジュネーブ条約に則ると」
「んな決まりができるのは二十世紀になってから。捕虜がテメェの生活費払うのがこの時代の常識だろ」
「ムリです! こんな金額、一生働いても私には」
「だから! 一生かけて働いて、返してくれるんだろ?」
ふいをつかれてミランダは顔を上げた。ティキは不貞腐れたように口をとがらせて、彼女を見下ろしていた。

***


18xx-4年
しきりに首を傾げながら、ティキは雨上がりの街を歩く。何度も大きな水溜りに突っ込んだ靴の中は歩くたびに水がタポタポ音をたてるが、気にならなかった。

彼がナーエンの街角で行き倒れていたのを、時計職人の親父に拾われたのは三ヶ月前のことだった。
人の移動の制限されたこの時代、彼を含めて住処を転々とする人間の就ける仕事は限られる。人が嫌がる面倒ごとだとか命の危険の伴う鉱山の仕事だとか。

しかし、今のティキの身分は時計職人見習いというもの。
特別な技術の必要なこういった職業はギルドで守られている。大抵は世襲制で見習いといっても普通はごく小さい頃から給金をもらわないでこき使われてこき使われて、十年二十年、知識と技術と世間のしきたりというものを叩き込まれて師匠に許可をもらって、ようやっと一人前と認められる。
それを、行き倒れたティキのような人間を拾って弟子見習いにするなど、酔狂にも程がある。と自分の命の恩人である時計職人を、ティキは呆れ半分に評していた。
それが実は酔狂どころか正真正銘の大バカなのだと知ったのは、半月前のこと。
よりにもよってティキに、自分の下で時計職人になるための修行をしてみないかともちかけてきたのだ。

こういった誘いは、手先が器用で外面がよくソツのないティキにとって珍しいことではなかった。ギルドのあるような職業では初めてだったが。
そして、誘われるたびにティキは当たり障りのない言葉で断っていた。
理由は二つ。
一つは、同じ場所に繋ぎとめられるのが面倒であること。
二つ目は、自分が流れ者であるということを骨身に染みて知っていたこと。

ティキのように街から街へ流れる者は、生まれてから死ぬまで同じ場所で暮らす人間の中にあって、いつまでたってもよそ者だ。便利だから、役に立ちそうだから、仲間に入れてやる、それだけのこと。役に立たなくなったら彼がどれだけ望もうと真っ先に叩き出される、そんな存在。
誘われて、断る。選んでいるのはティキのようだが、実際は選択肢などなきに等しい。
今回も断る筈だった。口を開けた時、ミランダの顔が浮かんだ。
「答え、もう少しだけ待ってくんねぇかな」
そっぽを向いて呟くバカ弟子見習いのワガママを、あごひげをたくわえた時計職人は、フンと鼻から息を吐いて許した。




おかしい。ティキさんの回想シーンが何でここまで長いの。
この人の過去は、考えれば考えるほど楽しいんだけど、我に返ったときの恥ずかしさも天井知らず。...今更か。
続きはこちら、も少しティキさんの回想シーンが続きます。

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