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二人のロミオ、とジュリエット 11

二人のロミオ、とジュリエット10からの続きです。
粗筋→ミランダさんとラビ君が任務で公園にいました。ティキさん+AKUMA登場、戦闘終了後、ミランダさんはティキさんにさらわれてアチコチ連れまわされていました。そのことを黒の教団側が知り、ラビ君とリナリーちゃんが正装して、ミランダさんの出席するかもしれない貴族の夜会に潜入調査してます。(以上)

今回の副題は「Lに関するお題」より。



勿忘草

赤い糸の結び目 3


任務先、オーストリアのリンツェンでミランダを見失ったラビが、一人黒の教団に戻り最初に向かったのは書庫だった。四年前のドイツで、AKUMAが関係していると思われる事件の記録を全て調べなおす。それから、ミランダの身上調査結果と付き合わせた。

最初読んだ時から違和感はあった。
ミランダが働き始めたのは十六歳。黒の教団に来て二ヵ月後に二十五歳の誕生日を迎えた。その九年と十ヶ月の間の失業回数が百回。
うち、九十回が二十一歳の十月から教団に来る直前の十一月までの四年の間のこと。平均すれば半月に一回、クビになってる計算だ。
一方で、二十一歳の六月時点での失業回数は九回。平均値は半年。
分母が少ないのだから、平均した値に意味はない。意味のない値の比較に意味のあろう筈がない。
正論だ。
その正論にあぐらをかいた結果がこの始末。

ドイツの事件は四年前の新聞に小さく載っていた。
ベルリーニの北西、ナーエンの街で時計職人が妻と弟子と一緒に殺された。彼らが三ヶ月前に親切に雇い入れてやった流れ者の若者の姿が見当たらない。恐らくこの流れ者が犯人だろうというものだった。街中での殺人事件でありながら扱いが小さいのは、バチカンの圧力だろう。
黒の教団の調査報告にはもう少し詳しい記述があった。見つかった夫婦のうち、妻の遺体にはAKUMAの特徴が見られた。AKUMAを壊せるのはイノセンスを持つエクソシストもしくは同じAKUMAだけだが、この時この街に教団所属のエクソシストがいた記録はない。姿を消した若者がAKUMAとなったかイノセンスを手に入れた適合者の可能性がある。追加調査を望む。その若者の名前は。

「ティキ=ミック」

呻いて、薄暗い書庫の中、ラビは報告書を握りつぶした。


***

ミランダが姿を消して、そろそろ一ヶ月になる。
今回の夜会でも見つからなかったと落胆しながら、キラキラチャラチャラ着飾った紳士淑女の波間をラビは泳ぐ。顔に貼り付けた愛想笑いもそろそろ限界、さっさと黒の教団に戻って次の対策を考えたい。
何しろ、二週間前のクストー卿の夜会を最後に、ティキ=ミック卿とその婚約者(というふれこみの)ミランダ=ロットーの噂を聞かない。
二週間までは確かに彼らに近づいている手ごたえがあったのに、それ以降は何の進展もない。

心中ため息と文句のオンパレードのラビの目の前、白い女物の手袋が落とされた。落ちたのではなく。こういった駆け引きもうんざりで、無視を決め込んだ彼の視界に、するりと白魚の手が差し出される。
喉まで出かかった空気の塊を無理やりのみこみ、あくまで紳士然とした態度で腰を折り、じゅうたんから手袋を拾い上げる。手の持ち主に目を遣れば、口を扇で隠しながら、いかにも秘密の話です、と言わんばかりに顔を寄せてきた。甘すぎる香水の匂いに眉間に皺が寄るのを何とか堪える。
ラビの努力は今回に限り報われた。

「赤の淑女をお探しなのは、貴方かしら?」
赤の淑女とはミランダ=ロットーにつけられたあだ名のようなもの。いつも赤いドレスを身に着けているからというのがその理由。良くも悪くも彼女は目立つ存在だったらしい。
あくまで平静に、しかし抑えきれない動揺のせいで小さく唇が震える、ように見えるような顔をラビはしてみせる。相手は満足そうに息を吐く。
「では、ねぇ? アナタが幸せの赤い兎さんなのではなくて」
「はい?」
「赤の淑女が仰ってたの。小さなテーブルでの会食の時でしたわ、皆様、ご自分の青い鳥はこれこれだと口にされる中、あの方、いつも通りに黙ってらして。丁度、私が隣席でしたのでお尋ねしましたの。そうしましたら一言、『赤い兎』って。
 他の方はお笑いになりましたけど、私、ピンときましたわ。もしかしたら、この方、ミック卿とは別にお好きな殿方がいらっしゃるのじゃないかって」

もう一人の探し人の名前が出た途端に跳ね上がった眉を、ラビは情けなく下げてみせる。手の届かぬ秘密の恋人を、目の前の女性にだけ打ち明ける風を装う。
「あぁ、それでは貴女は彼女を...彼女の真実をご存知なのですね...」
自分で自分のセリフに虫唾が走る。が、そこは忍の一字、ミランダ探しの手がかりのためとやり過ごす。

やはりとしたり顔で頷く目の前の女性。
「それで...こんなこと申し上げるの、私、ひどくはしたないことのような気がするのですけれど...」
もって回った長ったらしい喋り方が上流階級のくだらない礼儀とはいえ、いい加減、どうにかならないものか。
内心の焦りをきれいに押し殺し、ラビは縋るような眼差しを相手に向けてみせる。目を遣った先では全く変わらぬ表情の中、ヘイゼルの瞳だけが暗い喜びに輝く。
「ご存知かしら? ミック卿がご自分の領地に婚約者を閉じ込めてらっしゃるという噂」
どこの噂だ、それは。今まで出席したどの観劇の席でも夜会でも聞いたことがない。
ラビは黙って首を横に振り、続きを促す。

「何でも、赤の淑女がミック卿の手を振り払って靴が脱げるのも構わずクストー卿の夜会を退席なさろうとしたとか。それに腹をたてたミック卿がスイスのお屋敷へミス=ロットーをお連れになって...ほら、あそこは山に囲まれてますでしょう? 交通の便も悪いし、女の足ではそうそう出歩けない場所でゆっくり...説得なさっているとか」
思わせぶりな婦人の口ぶりと目配せ。こみ上げる怒りをラビは必死で抑えつける。
おまけに、色々な情報が錯綜してる。罠か?

ラビは訝しんだが、彼女の目に浮かぶのは無責任な好奇心と無邪気な悪意。この三週間、嫌になるほど見てきた上品な紳士・淑女のありふれた姿。
罠でもいいか、と唐突に思った。ニヤリと口元を歪める。片手でグシャリと髪を崩した。
「あんがとさん!」
目を丸くしている相手に、隻眼の青年は紳士らしからぬ口調で礼を告げた。


少しだけ。
少しだけ不安だった。気に掛けまい、気にするまいと言い聞かせるごとに、行く先々で耳にするミランダと敵である筈のティキ=ミックとの親密な様子。
今も不安で仕方がない。このご婦人の『親切な』お話の内容に。
けれど、ミランダはこんなバカげた席でも、自分を青い鳥にたとえてくれた。偽らずにいてくれた。
自惚れていていいだろうか。
彼女の赤い糸の結び目は、まだラビの指へと繋がっていると。



かけ足で、アレン君、リナリーちゃん、ラビ君。元は一つの記事の筈が、のびるのびる。
エピソード、欲張りすぎたなぁ。
続きはこちら

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