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二人のロミオ、とジュリエット 9

二人のロミオ、とジュリエット8からの続きです。
粗筋→ミランダさんとラビ君が任務で公園にいました。ティキさん+AKUMA登場、戦闘終了後、ミランダさんはティキさんにさらわれてアチコチ連れまわされていました。(以上)

今回の副題は「Lに関するお題」より。



勿忘草

赤い糸の結び目


18xx年。
「ミランダ?」
許しを請うように名前を呼んだ後の触れるだけの口付けで、ラビの年上の彼女はすっかり体の力をなくし、彼に全てを預けてしまう。
もたれかかってくる体の重み、縋るように掴まれる服の裾、全てがラビを煽るので、唇だけでは足りずに頬、鼻の頭、閉じた目蓋、額、耳に優しく優しくキスを落とす。

これ以上続けたらキスだけでは足りなくなってしまう。
分かっていても止める理由が見つからず、ラビが再びミランダの唇へと顔を寄せようとしたその時、絶妙のタイミングで、薄い手のひらが彼の唇に押し当てられた。
震える声が、ラビの名を呼ぶ。この世の善きもの全てを称えるように。
「ラビ君」

するとラビは、蜜より甘い声がもっと欲しくなって、それ以外考えられなくなる。
「何さ、ミランダ」
どうしたんさ、ミランダ。何でもいいよ、もっと喋って。声を聞かせて。名前を呼んで。偽りの名前を。いつか捨てる仮初の名前を。ミランダだけに残す名前を。

願いを告げる代わりに、ラビはミランダの額に自分のそれをゆっくりと重ねる。彼女の吐息にまつ毛や唇をくすぐられながら、他愛のない話をする。
それが日常。
けれど、この日は違った。

「ラビ君、目、を閉じてくれる?」
「もちろんさ!」

今にも消えそうな儚い声で頼まれて、ラビが頷かずにいられる筈がない。
眼帯をつけていない左目をギュッとつぶった。期待に頬が緩む。もしかして、もしかすると。
しかし、いつまで待っても、柔らかな唇も甘い吐息も、ラビの顔に降りてこない。
ジリジリしながら待つこと五分、ゆっくりと左手を持ち上げられた。ウサギの心臓が飛び跳ねる。
そろそろと薄目を開ける。狭い視界、その下端、ミランダがラビの手を押し頂くように両手に包みこみ、目を伏せ、唇をよせている。
触れるか触れないかの温もりが、薬指のつけ根に一瞬だけ。
そして、すぐに離れた。

ラビの頬に朱が走る。
居ても立ってもいられず、彼女を呼ぶ。心も体も、彼女の全てを自分の元へと呼びよせるように。
「ミランダ!」
「きゃぁあ!」
細いウェストを両手で掴んで抱きよせた。
「ミランダ、ミランダ、ミランダ」
豊かな胸に顔が埋まった。けれど、ラビの目的はそんなことではない。そもそも、彼女といる時に目的などあった例(ためし)がない。

真っ赤になって身を捩る彼女を自分の膝に下ろし、やわらかな頬を自分の左手で覆う。残る片手は背中に回して。一度だけ右の頬にキスをする。
もうミランダの息は切れ切れで、顔どころか耳も首もリンゴといい勝負。
ラビは笑いながら彼女の左手をとって、傷跡に口付ける。(というより、手のひらの真ん中にキスをすると、たまたま傷に触れることになる)
続けて、薬指に唇を寄せる。音をたてて口づけて、足りずに唇で食んで、まだ足りずに歯をたてた。

ミランダは驚き手を振るが、ラビの力に敵うわけがない。たっぷり一分間ほどたって、年下の青年の歯の間にあった薬指が彼女の意識の制御下に戻ってきたときには、真っ赤な歯形が白い肌にクッキリと残っていた。

それから、ミランダは決して自分からラビに触れようとしなくなってしまった。思慮深いはずのブックマンJr.は、己の浅はかな行動を海より深く悔いたのだった。


***

「ブローカーと思しき貴族の屋敷に潜り込ませてた団員から報告があった。ミランダ=ロットーと名のる女性が、ここ一週間、毎晩どこかしらの夜会に顔を出しているらしい。ティキ=ミック卿にエスコートされて」

いつもの司令室で、いつものメンバーを前に、変わらない漂々とした口ぶりで部屋の主が隻眼の青年へ目を向けた。

「さて、どうする?」

答えなど決まってる。




もう、もう、書いてて恥ずかしくて死にそうだった今回の回想場面。楽しさに比例して恥ずかしさも増すなんて、どんな罠だ。
昔読んだ少女漫画は、私の血となり肉となってるのだと確認する瞬間(笑)
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