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二人のロミオ、とジュリエット 5

二人のロミオ、とジュリエット4からの続きです。
粗筋→ミランダさんとラビ君が任務で公園にいます。ティキさん+AKUMA登場、戦闘終了後、ミランダさんの姿が見当たりません。(以上)

今回の副題は「Tに関するお題」より。



勿忘草

快楽主義者の落し穴


18xx-4年。
へぇ、ティキさんておっしゃるんですね。色んな国を行き来してるなんて羨ましいです。
はい、私はずっとこの街で暮らしてきました。あ、すみません、私はミランダ=ロットーと申します。
そんな、いくらもてなかろうと鈍くさかろうと若い女である自覚はあるので、暗くなってから公園の中を通り抜けようなんて、思ったことなかったんですよ。
でも、今夜は仕事がこんなに遅くなってしまったので仕方なく。明日の朝も早いし、寝不足は辛くないけど一人暮らしだから帰ってやることは沢山あるし。
いいえ、本当です、今まで夜の公園に足を踏み入れたことなんてありません、もう二度としません、ご忠告どうもありがとう。
えぇと、そうですね、今の勤め先はこの公園を挟んで丁度、借りてる部屋の入ってるアパートの反対側、…うぅ、実は最初の勤め先から数えて十番目です。でも、ここに勤め始めてそろそろ一年、長期勤続記録を更新中なんですよ。
キリのいい数字でもあることだし、死ぬまでここで働ければいいなと思ってます。何より、失業記録は一桁で止めたいですし。

つれを得て気が緩んだのか、ティキが水を向けるとミランダは饒舌に自分の身の上を語ってくれた。「ご迷惑をおかけするわけには」とティキの申し出を何度も断っていたのが嘘のようだ。
へぇ、ふぅん、そりゃまた、おいおい、本当に?
適度なあいづちを打ちながら、ティキはちょっと呆れていた。このお嬢さん、危機管理が全くなってない。勤め先はおろか、一人暮らしなことまでついさっき会ったばかりの男にバラしてどうする。
その思いはミランダが部屋へ着いてティキの目の前で鍵を取り出した時、一層強くなった。

「ちょっと待ってて下さい、何かお礼を」
ドアを開けたまま部屋の中へと何かを探しに行こうとしたミランダを、ティキは呼び止めた。ふり向く小さな顔は何とも邪気がない。ティキは「う~ん」とうなりつつ、ボサボサの頭をかき回す。自分らしくないという自覚はある。
「んで、ミランダ。本当にアンタ、気をつけた方がいいよ」
「はい?」
「今日会ったばっかのよく知らない男を自分の住んでるトコまで案内してどうすんの?」
「え?」
「例えばさ、オレが変な気おこしてこのドアこじ開けてカギ閉めちゃえば、ミランダはオレと二人っきりで部屋に閉じ込められちゃうわけだ。さて、ミランダはどうする?」
「!」
ようやっと自分の迂闊さに気づいたらしい。白い顔から血の気が引いて青くなる。
ティキが左手を上げた。ビクリと華奢な体が震える。見上げてくる目にはうっすらと涙。笑いたくなるほど、弱くて愚かな存在。彼がよく聞かされた女そのまま。
では、これは何だろう。空っぽの彼の胸を満たす温もりの名前を、ティキは知らない。
手を伸ばす。ギュッと薄い肩をすくめて、ミランダが縮こまった。

「おやすみ、ミランダ。よい夢を」
ティキは目の前の柔らかな髪を一度なでて背中を向けた。


***

ミランダの座るスツールのそば、漆ぬりの黒光りするテーブル。その上に、ドレス、下着、ネックレス、帽子、イヤリング、帯、ストッキング、扇、コサージュ、思いつく限りの女性の身を飾る品物が無造作に重ねられている。
感情の宿らない瞳を持つメイドにコルセットを締めあげられながら、ミランダは悲鳴を上げた。
「こんな高価そうな服、着られません! ぜったい! どこかにひっかけて破ってしまったり、飲み物こぼして汚してしまったりしまうんです、私は」
「破こうが汚そうが好きにすりゃいい。全部、ミランダにやったんだから」
「よけいダメです。こんな服を頂く理由がありません!」
「男が女に服贈る目的なんざ、一つだろ」
扉ごし、声が笑う。楽しそうに唇の端を吊り上げる整った顔が目に浮かぶ。
ティキはミランダの身支度をレベル1のAKUMAに任せて、部屋の外でタバコをくゆらせている。
「自分が選んで着せた服を脱がせるため」
「てぃ、ティキさん!?」
裏返った叫び声に艶の滲む笑い声が弾けた。完全にからかわれている。憮然としつつも、ミランダは鏡に映る自分の姿をしげしげと眺めた。

大きく開いた襟ぐりのイブニングドレスは血のような深紅。贅沢に使われた細かな刺繍の施されたレースの飾り。光沢のある生地はシルクだろうか、なめらかな肌触りは癖になりそうだ。
耳にはドロップタイプの豪奢な金とルビーのイヤリング、細い首には金の地金に銀の鎖が巻きつく何重にも連ねられたネックレス、肘まで覆う長い手袋を細い銀鎖がユラユラと彩る。床まで届く幅広の帯には黒真珠が趣味よく配置され、ウェストの細さを際立たせていた。

最後の仕上げと椅子のそばに置かれた赤いビロードのハイヒールに足を収めるやいなや、ドアが外から引き開けられた。上げた視線に映った相手の姿に、ミランダは息をのんだ。公園での再会のときも思ったが、何とうつくしい男(ひと)だろう。ミランダの知るティキとは大違いだ。
貴族然とした格好には似つかわしくない陽気な口笛が彼の口からもれて、ミランダはようやっと息を吐く。
「おー、キレイキレイ! 髪が短いのが惜しいけど、立派に淑女に見えるぜ、ミランダ。馬子にも衣装ってか?」
「ティキさん、それは褒めてません」
「何、ミランダ、褒めてほしかったんだ?」
意地悪く目を細めて見下ろしてくるティキに、ミランダは言葉が続かない。
うなだれた彼女の髪に柔らかなキスが降ってくる。驚いて顔を上げると、ティキは腰を折り、ミランダの指を掬いあげ、手の甲へと口付けた。金の瞳が真っ黒なまつげの下からスッと彼女を見つめる。
「では参りましょうか、マイレィディ?」
どこへですか?
問いかけたくて問いかけられなかったのは、ミランダがティキの優雅な所作に見とれていたからだけではない。
恐らく。



書いてる人間のイメージするハーレクイン要素⇒ヒロインが意味もなく宝石、ドレスをプレゼントされる(笑)
にしても、長い長い。書いてて楽しくて(以下略)。
続きはこちら

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