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LMT(ラビミラティキ)です。
今回は軽め、にできればと日々努力中。
久しぶりな気がしたんですが、「Libraは嗤う」終わらせてから2ヶ月しかたってませんでした。
タイトルは「LとMとTに関するお題」、副題は「Lに関するお題」(2つ)「Mに関するお題」(2つ)「Tに関するお題」(2つ)、全てLMT同盟さんから。
一昔前の少女漫画風味にハーレクイン要素を散りばめた、ベタベタな展開(笑)になる予定。
今度こそ全年齢対象になる筈!
そして、こんな所から失礼しますなのですが(全くだ)。
このお話には、PCサイトのSAさんのとある日記絵(+文)から想像力を逞しく羽ばたかせた結果が結構あったりします。心からの感謝&お詫びを。
では、よろしければどうぞ。
今回の副題は「Mに関するお題」より。
漆黒の腕(かいな)
雨が降っていた。土砂降りだった。後で、十数年ぶりの大雨だったと知った。
そんな豪雨の中ミランダはもう三十分間、傘をさして立っていた。頭上ではガス灯がボンヤリとした明かりをにじませている。
せっかくだからと初めて袖を通した淡いピンクのワンピース。最初は泥がはねないようにと裾を持ち上げていたが、ここまで濡れては意味もない。強風になびくがまま放してしまった。すぐ近くの針葉樹の太い木の枝が柳のように揺れている。
こんな天気で良かったとミランダは思う。彼が来られない理由になる。
晴れていて風が爽やかで、それなのに待ち人が来なかったら寂しい。来る筈なんてないと言い聞かせていても。
約束の時間まであと五分。
それから三十分間、待とうと思う。そしたら一人であの寒い部屋へと帰ろう。腕に下げたバスケット、ここに来るまでに二度水溜りに落としてしまったから中のサンドイッチはもう食べられないけれど。失敗した残りが家に沢山残っている。
前を向いていた視線は約束の時間が近づくにつれ段々と下がっていく。
別にデートとか、そういうのではない。ただちょっと、今度の休みはいつかという話になって、丁度彼もその日は仕事がお休みで、それじゃどこか一緒に行こうかなんて言われて、だったら何か食べるものを作って来ますとミランダが答えて。
そんな風に男の人と出かけるなんてミランダは初めてだった。
知り合ってまだ二ヶ月にもならないのに、はしたないと思われたらどうしようと心配でもあった。
けれど、これまでなら仕事のある日の夕方、この公園からミランダの部屋までの十数分しか一緒にいられなかったから、明るいうちから会えることが楽しみで。
何より初めて約束してくれたのが嬉しくて。
柄にもなく浮かれて忘れていたのだ。自分の運がとてつもなく悪いことを。例えば約束した日が十数年ぶりの大雨になるくらいに。
俯く視界に、バシャリと水を跳ね上げて茶色い靴が飛び込んできた。低く甘い声が雨粒と共に降ってくる。
「あれ、ミランダ? 早いなぁ、オレのが先だと思ってたのに」
まさかと思いつつも、顔を上げる。真っ先に目に付くのは、雨に濡れた分厚いメガネ。ミランダが待っていた人のトレードマーク。
自分の目が信じられずに思わず呟いていた。
「…え? 何で…」
「何でって、今日はデートじゃなかったっけ?」
「で、デートって、そんな、だって雨が」
「じゃ、何でミランダここにいんの? オレのこと、待ってたんじゃねぇの?」
不思議そうに首を捻る。黒い髪の先から雫が滴り落ちる。濡れて普段より素直になった髪を、彼は無造作にかき上げた。形のよい額が露わになって、ミランダがちょっとドキドキしていると、彼が嬉しそうに笑った。
「可愛いな、ミランダ。このワンピース、初めて見た。何だ、オレももう少しオシャレしてくりゃ良かった」
見れば、彼はいつもの白いシャツにサスペンダーで吊ったゆったりしたズボン。初めて見る古ぼけたベストが、似合っているのかいないのか。
いつもの短い無精ひげが綺麗に剃られて、首へ続く整った線がよく分かる。
「それで、これ」
気のせいだろうか、見上げる彼の首元が少しだけ赤く見えるのは。差し出されたのは新聞紙に包まれた、
「お花?」
「昨日買ったから萎れてら。雨に濡れりゃ少しは元気になるかと思ったんだけどな」
「あぁあの、その、私、頂いて…も?」
「ミランダに買ったんだから、もらってくれないと困る。オレの部屋には花瓶なんてないし」
ジワリと涙が滲んだ。恐る恐る受け取って、そっと胸に抱きしめる。
「ありがとうございます。嬉しいです」
この時ミランダはよっぽど酷い顔をしていたのだろう。目を上げると、彼がポカンと口を開けていた。慌てて謝りだしたミランダを押しとどめて、分厚いメガネの奥、金の瞳が優しく笑った。
***
「ほう、ほう、それはそれは。で、その彼が今ミランダ殿の隣にいるエクソシスト様ですか?」
「違います!」
こんな時だけ何もそこまでキッパリと否定せんでも。昼下がりの公園、鉄と銅とで出来たベンチの上に腰かけたミランダの隣、行儀悪く座るラビがシオシオとうな垂れた。
「いいえ。彼は、その、事件に巻き込まれて…」
続けたミランダの語尾が震えて消えた。俯く姿に心が痛むものの、少しだけホッとしている自分の酷薄さにラビは気付く。彼女の態度が何を意味するか分からないほど、彼は鈍くなかったので。
導入部分が長くて申し訳ない。も、書いてて楽しくて楽しくて。
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