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宝石姫 1

観用少女(プランツドール)のミランダさんてどうだろう。
というわけで、以下、川原由美子さん作:観用少女の設定でラビミラです。
…色んなお題やら書きかけのお話(「恋とはどんなものかしら」。忘れてるわけじゃないの)やらの方も進めたいんだけど、楽しくて。

ところで、私が観用少女で一番好きなのは2巻(朝日ソノラマ版の。文庫だと何巻になるんだろ)の、ひたすら前向きにハッピーエンドへ向かってくモデルのおねいさんが主人公のお話です。(聞いてない)


1.ガーネット(前)


寒い寒い、雪のチラつく夜だった。
ラビがその人形と出会ったのは。

街は新年を迎え、陽気に賑わっている。
ざわめきから逃れるように、隻眼の青年は大きな道路の角を曲がり細い路地へと足を踏み入れた。吐く息が白い。首に巻いたマフラーを気休め程度にかき合わせた。石畳にうっすらと積もった白い雪に足跡を残しながら暫く歩く。
と。
ニューイヤーのカウントダウンが終わって随分と過ぎていたが、目指す店は柔らかな明かりを零していた。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でございましょう?」
「ハジメマシテ、ご主人。オレはラビ、物書きの端くれさ。観用少女(プランツドール)の取材をさせて頂けないかと」
言いながら、繊細な細工の施された紹介状をメガネをかけた線の細い男に手渡す。彼はチラリと視線をくれて、やたら上品なその紹介状を開けようともしない。ラビは密かにため息を吐いた。これでダメなら、他の方法を探さなければいけない。

「リー様のご紹介ですね。…コムイ様の妹君はお元気ですか?」
「リナリー? 元気さ。ちょっとトラブルに巻き込まれて…あぁ、アンタは知ってるんか、そういや世話になったってコムイも言ってたさ。ただ、アレンに懐くのが気に入らないとか文句言ってたな」

意外な話の切欠に、逃してなるかと言葉を続ける。不躾なくらい親しげな口調で。
コムイというのは今をときめくリー財閥の創始者にして現総帥。二十代の若さで世界有数の財を成した立志伝上の人物だ。一介のモノ書きでしかないラビがそんな人物と知己を得られた理由は、ここでは省略するとして。
天涯孤独の身の上であるコムイが妹と呼び溺愛しているのが、リナリー。観用少女(プランツドール)である。一目惚れだったと、鋭い瞳を和ませた当人から惚気られた。
何度かコムイの屋敷に招かれ、彼女を紹介されるほどの信頼を得たラビだったが、そこで生来の好奇心が頭をもたげた。

ミルクと愛情で育つという、観用少女(プランツドール)。自分の意思で自由に動き回るこの人形、外見はその美しさを除けば普通の少女と変わらない。では中身はと思っても、まさか解剖させてくれと頼むわけにもいかない。
考えあぐねて、プランツを扱う店(世界に一つだけしかないらしい)の存在を聞きだし理屈をこね回して紹介状を書いてもらった。「あの店のミルクがリナリーの一番のお気に入りなんだ。だから。君が店主の機嫌を損ねたらどうなるか。分かってるよね?」なんて脅しつきで。
そんな訳で、プランツの取材が難しくなるのとは別の意味で、ラビの運命が今回の訪問にかかっていたりする。必死になろうというもの。

眼帯をしていない片方の目で見つめる先、店主が小首を傾げた。
「取材と申しますと、何か雑誌のような?」
「いんや。正直言うと、オレの個人的な興味のためというか。そのうち一冊の本にまとめられればなんて思ってるさ」
嘘ではない。が、全てでもない。
店主にじっと見つめられたラビは、穏やかならざる心中を押し隠してまっすぐ視線を返した。
しばらくして。ようやっと店主が微笑を浮かべて店の奥へと体を向けた。ラビは詰めていた息をどうにか吐き出す。
「お茶の一つも出さずに失礼いたしました。さ、こちらへどうぞ」

店の中は雑多な珍品で溢れていた。不思議な曲線を描くテーブル、幾何学模様の壁掛け、明るい色彩を織り込んだ絨毯。そのどれもに美しい姿をした人形が座っていたり寄りかかりながら佇んでいた。
物珍しさに、ラビは度々足を止めた。その度、店主は何も言わずに胡散臭いだろう客に付き合い立ち止まる。

ふと、吸い寄せられるようにラビの視線が止まった。
大きな古時計の影、ポツンと一つ壁にもたれた、癖の強い黒髪の。
「…少女?」
通った鼻筋、スラリと伸びた長い手足、豊かな胸の膨らみ。20歳前後の女性に見える。
ラビの視線を追いそちらへと顔を向けた店主はふんわりと微笑んだ。
「あぁ、こちらは育ち続けるプランツです。珍しいケースですが、ないこともないのですよ」
「珍しい?」
「はい。
 普通、プランツは人間の年齢でいうところの12歳から14歳、どれ程大きくなろうとも、16歳程度の外見で成長が止まります。
 あとは枯れるまでそのまま。とはいえ、人間の寿命よりは遥かに長い時を変わらぬ姿で過ごしますが。このように育ち続けるプランツは、人間と同程度かそれより短い期間で枯れてしまいます」
プランツが枯れる、というのは人間が死ぬのと同義だ。ラビはコムイに聞かされ知っている。
「眠ったまま枯れちゃうんさ?」
「育てば枯れる、普遍の真理でございますね。或いは目を覚ませば、そこで成長が止まるかもしれませんが」

そんなものかと踵を返そうとしたラビだったが、何故かこの育ち続けるプランツから目が離せない。
青年の見つめる先、どう見ても人間の女性にしか見えないプランツは、眉間に皺を寄せ玉のような汗が額に浮かべた。固く握りしめられた指は小刻みに震え、薄く開いた唇から漏れる息は苦しげだ。
これが人間だったら「悪夢にうなされている」と形容するだろう。ラビは眉をしかめた。

「プランツって、息したり夢見たりするん?」
「元は植物ですので、息はするでしょうね。夢は…どうでしょう。最近の研究で植物も夢を見ているという説があったようですが」
「あのプランツ、うなされてるようなんだけど。起こしてやんないんさ?」
「プランツを起こすことのできるのは、彼女たちが選んだ人間だけでございますから」
それに。
「外の世界を知らないまま見る悪夢など、たかが知れている…違いますか?」
店主はふわりと微笑んだ。
ラビの鼓動が跳ねた。考えを読まれたかと慌てたが、そんな筈はない。
この不思議な空間に毒されたようだと苦笑して、悪夢にうなされているらしいプランツの側へと歩み寄る。

近くで見ると、確かにこのプランツは変わっていた。
ラビの知っているプランツといえば、コムイの所のリナリーと、今日ここに来て目にした数体だけだが、それらはどれも人間離れした光り輝くような美しさを湛えていた。どれほど控えめなたたずまいでいようとも、誰もが目を奪われ思わず感嘆の息を吐くような。

しかし、この育ちすぎたプランツは。
肩までの長さのうねる黒髪に艶はなく、透き通るように白い肌の色はいっそ青い。離れて眺めていた時にはスラリと長く映った手足は折れそうに細く、目の下にはうっすらとクマのような陰。華やかさの感じられない地味な黒いドレスが手首と足首の先まで覆っている。
なるほど、目を止めたのはあまりに貧弱な有様だったせいかと、珍しもの好きなラビが頷いていると。
プランツの固く閉じられた目からポロリと丸い水滴が零れ落ちた。



またもや続きます。書いてて楽しくてv
長く書く癖がついちゃったのかなぁ。続きは今週中にはアップしたいと。
で、アップしました。続きはこちら

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