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去年今年(こぞことし)

ミランダさんお誕生日おめでとう!
毎年恒例行事をすませたところで、新年明けましておめでとうございます。

旧年中は更新少ないのに、ご訪問ありがとうございましたm(_ _)m
今年も……原作の行方がかなり心配ですが(連載再開するのかというレベルで)……当blogは相変わらずマイペースに頑張る予定ですので、どうぞよろしくお願いします。

さて、新年最初のSSはティキミラ家族で初詣です。
時代はいつなのとか、彼らの国籍どうなってるのとか、ここはどこなのとか、そもそもこの組み合わせはどうなのというのは気にしない方向で。

よろしければどうぞ~。



去年今年(こぞことし)貫/く棒のご/ときもの


吐く息が白い。
曇った眼鏡を外して見上げた空は、遠く山との境が薄紫に染まっている。去年と比べて家を出る時刻が遅かったのをティキは思い出した。今年はこの国の民族衣装だという羽織袴や小紋を着るのに時間がかかったからだ。
この服、見た目は華やかだが、着ている当人としては風の吹きこむ首元や手首が寒くて仕方ない。

(高いからやめといたとんびってやつ、買っときゃよかったかな)

買う金の算段は思案の外。ティキは歩きながら袖でぬぐった眼鏡を顔に戻し、道沿いに並ぶ屋台からお目当ての看板を探しだし連れを呼ぶ。

「な~あ、ミランダー。オレやっぱベビーカステラがいい」

自分の生まれた国からこの極東の国へとやってきたらしい菓子の、変わり果てた姿を所望するが答えがない。
訝しさに視線を巡らすと、それなりに多い人の流れをせき止める妻の姿が目に入る。彼女が少し腰をかがめているのは、隣を歩く相手に合わせてのことだ。こいつは何しろ身長が低いので、手をつなごうとするとそうなってしまう。歩幅も身長に比例するわけだから抱きかかえた方が早いのだが、抱きかかえられる当人が『あるく』と言い張る以上、では歩いてみろと地面へ下ろしてやるのが親心というものだ。
寒い中、頬を真っ赤にして異国の民族衣装に履き慣れない下駄を身に着け、必死に歩む姿は親の欲目を差し引いても可愛いと思う。のだが。

(何だろ。いつもならこんだけ人が混んでりゃ、舌打ちの一つ二つされそうなもんだが。この国の連中ときたらエスカレーターの脇をすり抜けるときだって、迷惑そうに咳払いやら何やらするし)

今日は違う。
亀の歩みの母子を避けるように、その周囲に僅かなスペースが空いている。のみならず、横を通り過ぎざま小さく手を振って見せる女の集団がいたり、すれちがう時に微笑みかける年寄り夫婦がいたり。
肝心の母子が歩くのに必死でそういった動きに気づいていないのが、残念なところかもしれない。

(まあ新年だしな。せっかちな奴らも少しはのんびり気分になってんのかね)

タバコ代わりに妻から押し付けられたロリポップを噛み砕きながら、ティキが向きを変えようと立ち止まると、彼の後ろを歩いていた少年がティキの背中にぶつかった。

「お、悪いな」

その手から落ちそうになったチョコバナナを支えてやりながら呟くと、相手は小さく頭を下げて家族を追って行く。

(礼……はしたのか。それにしたって『どういたしまして』とか『ありがとう』くらい言ってもいいだろうよ)

胸の内にぼやきを留め、来た道を戻る。ずっと我が子の足元を見つめていたミランダがふっと視線を上げた。こちらを見て目を和ませる。

「ティキさん」

と口が動く代わりに足が止まった。隣を歩く幼児のバランスが崩れる。つられてミランダの体が傾く。女のこげ茶の瞳が大きく見開かれた。

「あ」
「あ、じゃねえよ。気をつけろ」

目が合ったと同時に走り寄ったティキは、母子を抱き寄せため息を吐いた。きつめの口調は照れ隠しだ。

「すみません」
「ごめしゃい」

なので、母子そろって謝ってこられると、どうしてよいか分からない。

「……寒い! 屋台で買うもん買って早く帰るぞ」

わざとぶっきらぼうに言い捨てて、小さい体を抱き上げた。途端、短い手足がバタバタと暴れ出す。小さな足の指にひっかかっていた下駄が脱げかけたのを、ミランダは慌てて自分の手に引き取った。

「あるく~。だっこイヤ~。おとしゃんに迷惑かけないの~」
「チビのくせに変な気つかうな。おとしゃんが寒いんだよ。マフラーと上着代わりにペッタリ張り付いてろ」
「おとしゃん、しゃむい?」
「おう、おまえの体のがあったかいだろ。ホッカイロ代わりになっとけ」
「なる!」

元気な返事で有言実行。小さく冷たい手に首を抱きかかえられたティキが鳥肌立ててしばらく。子ども特有の高い体温に、触れあった首と胸元が温もっていく。
目の前で続く父子のやり取りに頬をゆるめるミランダだったが、ティキの差し出した手に首を傾げた。

「ティキさん?」
「……手が冷たいんだよ。おまえも手袋の代わりになっとけ」
「……? はい!」

理解すると同時にミランダの声が弾んだ。絡められた女の手は氷のように冷たかったのだが、目当ての屋台に並ぶ頃にはすっかりティキと同じ温度になっている。

「おまえは……今年もじゃがバタか?」
「ティキさんこそ、毎年ベビーカステラじゃないですか」
「オレのは屋台でしか食べられないからいいんだよ。おまえのは家でいつでも作れるだろう。たまには焼きそばとか」
「それこそ家で作れます。というか、今年も家に帰ったら焼きそば作るんですか?」
「肉と野菜たくさん入れてな」
「おせちはどうするんです」
「あれ飽きるだろ」
「食べたのは朝だけですよ」
「明日の朝も食うんだから今夜くらい焼きそば食ったっていいだろ」

すると、

「やきそば! おイモも!」

幼児の高い声が大人の会話を遮った。両親は顔を見合わせた後で笑いだす。

「ええ。焼きそば作って、おイモもおうち帰ってからあっためて食べましょうね」

父親の腕の中から得意そうに見上げてくる子どものやわらかな髪を、ミランダの手が優しくなでる。
今宵は新月。月の昇らぬ空から、一番星が親子を見下ろしていた。



/水(きよみず)へ祇/園をよぎる桜月夜今/宵逢/う人みなう/つくしき




これ、初詣じゃなくて屋台巡りなんじゃorz
気を取り直して。
注釈の必要もないと思いますが、冒頭は虚子さんの、最後のは与謝野晶子さんの歌です。与謝野さんのに至っては季節も違ってますが、まあ雰囲気で(笑)

二人の間の子どもは性別や年齢がどっちでも大丈夫なように書いたつもりです。お好きな年齢、性別でご想像いただければ幸い♪
これまた分かりづらいですが、ティキミラ親子三人とも和装(?着物)を着てます。見る分にはきれいなんですが、自分が着たら寒いだろうなあ。

では、本年もよろしくお願いいたします!

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