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TRICK AND TREAT(後)

いつも拍手ありがとうございます! 毎回芸のないお礼ですみません~。
さて、遅くなりましたが、ラビミラハロウィン後編です。何か月遅れのイベントだ(笑)
前編を少し変えたので、ちょっと被った箇所から後編を始めてます。
よろしければ続きからどうぞ。



TRICK AND TREAT(後)


残された女の片方は、動きを止めたまま自分の右手に視線を落とす。

「みぎゃ?」

小さく呟き答えを求めて自分を見上げてくる相手へ、ジェリーは肩をすくめてみせた。

「ま~たコムイちゃんが何かしたみたいね」
「何か……? 私、リーバーさんを引きとめたくて……だって私のクルミ……。だから手を伸ばして、そしたら丁度そこに……」
「ここじゃそんなに驚くようなことじゃないわよ~。大方、迷惑な室長様がネコ化ならぬオオカミ化薬か何か作ったのをリーバーが飲まされたとかでしょ。普段ならリーバーも引っかからないんだけど、最近は特に忙しそうだったものねえ」
「オオカミ……化……? じゃあ、あの、尻尾は……」

言いながら、女の白い頬がみるみる赤く染まっていく。ジェリーは首を傾げた。はて、今の会話のどこに恥じらう要素があっただろう。

「私! 私そんなこと知らなくて……! 尻尾ってことはリーバーさんの体の一部ってことで、あんな無造作につかんじゃって……」

ああそのことか、とようやっと合点する。

「気にしないでいいわよ。リーバーだって大して意識してないでしょうし。……まあ確かにしっかり神経通ってそうだったけど……そういえば、あの尻尾、何から作られてんのかしら……?」

今や両手で顔を押さえたミランダは耳まで真っ赤にしている。このままでは聖堂にこもって明日の朝まで懺悔し続けそうだ。

「そんなことより、ほら! あんた自分のお菓子なくなっちゃったでしょ? こんなイベントの最中、手ぶらで歩いてたらイタズラされまくりよ! この籠、持って行きなさい」

こんなこともあろうかと用意していた予備の菓子籠を、ジェリーはミランダに押し付けた。

「でも!」
「いいから。ああでも、アンタのクルミは入ってないわよ?」

途端、現金なもので、今にも露と消えそうだった女はガックリと肩を落とした。

「私のクルミ……」

さて、彼女のお気に入りを新しく作ってやるべきだろうか。
ジェリーが腕組み思案を始めたところで、楽しそうな男の声が食堂に響いた。

「トリッカントリーッ!」
「きゃあぁあ~!!!」

続いて女の悲鳴が。呆れたようなジェリーの言葉が続く。

「アンタどっから来たの? 今、いきなりミランダの後ろに立ってたわよね?」
「えー、どっからってあっちの入り口から? ジェリーがぼーっとしてたんじゃね」

赤い頭に同じ色の三角帽子をかぶった男が、にこやかにジェリーへと笑いかける。男の腕の中に抱き込まれた女の目にはうっすらと涙。

「とにかく、早くミランダを離してあげなさい。恐がってるわよ」
「何で」
「いきなり背中から男に抱きつかれりゃ、誰でも恐いわ!」
「でもミランダにこんなことすんの、オレだけじゃん。なーミランダ?」

ラビがかけた声に、ミランダは恐る恐るといった体で後ろを振り仰いだ。

「ラビくん?」

問いかける様子は、どう見ても自分を抱きしめる男がラビだと確信しているようには見えない。

「何? オレ以外にもミランダにこういうことする奴、いるん?」

すうっとラビの片方だけのぞく目が細められる。

「……なんでヒゲ?」
「へ?」

二人のやりとりを眺めていたジェリーはもちろん、当事者のラビもミランダの質問に間の抜けた顔になる。

「首にいつもと違う感じがして、それで驚いて……というか、いつも言ってるでしょう! こういうのはダメだって!」

が、ラビが目を瞬いていたのは少しの間。すぐに不満そうに口をとがらせた。髪と同じ色の付け髭をしているので、分かりにくいが。対して、ジェリーは手で額を押さえる。

「何で~? 前から言ってたさ。オレがレプラコーンでミランダはバンシー、おそろいでアイルランドの妖精の仮装をしようって」
「ラビあんた、仮装云々の前にミランダやアタシの言ってること聞いてた? 普通、背後からいきなり声かけられるだけでも驚くものよ」
「いやあ、遠目で見てミランダがやけにうなだれてる風だったからさ。少し元気づけようかと」
「どんな元気づけ方よ!」
「で、元気でた? あとさっきも言ったけどトリート!」

腕の中の体をくるりと回して、ラビがミランダの顔をのぞきこんだ。

「ラビくんに悪気がないのは知ってるけど……こういうのは今回で最後にしてね。はい、ジェリーさんのお菓子」
「え! 今回は手作りするって言ってなかったっけ?」
「……いろいろあってリーバーさんに捨てられちゃったの」
「リーバーが? 嘘だろって、ああまたコムイが何かやったん?」

ミランダの目が泳ぐ。リーバーの「仮装」を目の前の相手に教えてしまっていいものか、悩んでいるようだ。
そんな彼女の指を、ラビは持ち上げて自分の口へと運んだ。

「ん~、やっぱジェリーのクッキー美味い」
「また! ラビくん、こういうのはダメだって言ってるでしょう!」

叱るような口調は一応行動も伴うもので、先程からミランダは相手につかまれたのと反対の手でラビの胸を押している。のだが、隻眼の青年は全く意に介していない。
ところで、先ほどラビがこの場に現れた時のセリフをミランダは聞いていたのだろうか。
それに「また」?
ということは、ラビはミランダの手をフォーク代わりに使ったことが前にもあるということだ。
遅まきながらの注意をジェリーが口にしかけたが。

「あのねミランダ、ラビは……」
「ごちそうさん! トリートはもらったから、今度はトリックさね」
「はい?」

小言はご免とばかりに、ラビがミランダを抱き上げる。いきなり高くなった視点に慌てながらも、未だミランダの危機感は薄い。

「ラビくん、私、あなたにお菓子をあげたわよ?」
「うん、だからお返しにイタズラしなきゃさ」

足が床から離れ不安定になった体勢を支えようと、ミランダがラビの肩に手をついた。

「トリックオアトリートでしょ?」
「トリックアンドトリートさね」

重なった言葉をはっきりさせる前に、二人の姿はジェリーの視界から消え、カウンターには友人の身を案じる料理長が一人残された。




もっとラビくんの仮装についても描写したかったんですが、まとまりがなくなっちゃいそうなので省略しました(それでも話がまとまってないなんて言っちゃダメ)。赤い三角帽子に緑の上着、髪と同じ色の付け髭で眼帯した姿は普通に怖いと思います。
けど、ラビくんのイタズラはあまりヒドイものではないはず。何といってもヘタレうさぎ……(笑)
季節外れのお話にお付き合いいただき、ありがとうございました!

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