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今回は、ようやっとリバミラ後編です。続かないのでご安心を(笑)
タイトルは群青三メートル手前さんの「淡々五十題」より。
よろしければ続きをどうぞ。
僕を動かせるもの(後)
「千年公に勝っても負けても教団はなくなるはずだ」
リーバーは一息に告げた。ミランダは固まったまま。驚きすぎて声も出ないといった様子だ。無理もない。少し前までは自分もなんとなく死ぬまでこの教団にいるような気がしていた。(その割に、よく転職してやるだの辞めてやるだの言っているが)
だが、教団の設立目的を考えれば自明のことだ。気づいた時には、それまで気づかなかった自分に腹が立ったくらいだ。
「負けたらというのは分かります。あってほしくないけど分かります。でも、勝った時も?」
気を取り直したようにミランダが問いかけてくる。リーバーは頷いた。
「黒の教団は何のためにあるんだっけ?」
「それは、千年公の作るAKUMAから人間を守るため……」
「勝ったらAKUMAはなくなるだろ?」
「あ……!」
相手の顔に理解の色が浮かぶ。確認して、リーバーは力を抜いた。丁度、相手の豊かな胸に自分の額があたった。この体は何て柔らかくて気持ちがいいんだろう。何度目かの感想と同時に、瞼の重さが耐えがたく感じられた。自分のこらえ性のなさにも嫌気がさした。
「本当はこんなこと、ミランダに言っちゃ駄目なんだ」
「士気が下がるとかですか?」
「勝っても負けても失業ってのはなあ」
「それなら大丈夫です! 私、失業には慣れてますから。あ、でも、だったら他の人には言わない方がいいですね」
「ん。頼む」
思った以上にしっかりした婚約者の受け答えに、笑いがこみ上げる。教団がなくなったら、と思いついた時の自分はどうだったろう。自分で出した答えに愕然としたことは覚えている。今も、自分が口にした予想に血の気が引くようだ。
「まあ、今と同じは無理でも少しは残せるよう、頑張るつもりだけど」
「あの、考えてみれば教団が必要なくなるってことはおめでたいことだと思いますから、あまり無理しないでくださいね」
「意外とミランダは薄情だな」
「……よく分からないんですけど……人が必ず死ぬように、組織とか国とかにも寿命があるって……」
「組織有機機関説か? そうだな、今と全く同じは無理だ。でも、目的が同じ奴らと同じ場所で頑張りたいと思ったその場所を守るのはやりがいがあるぞ。
それに巻き毛、じゃなくて室長も何か考えてるだろうから……悔しいけど何とかなると思っちゃうんだよなあ」
「コムイさんが?」
重い頭を上げて、膝に座らせた分、自分より高くなった女の顔を見上げる。思った以上に顔色が悪い。声だけでもと、空元気をふりしぼらせてしまっただろうか。
「疲れてるのに悪い。今言うことじゃなかった」
「疲れてるのはリーバーさんも一緒です。……あの、コムイさんともこんな風にお話したんでしょう? だったら、私も聞きたいです。……コムイさんと違って役に立つようなこと、言えなくて申し訳ないんですけれど……」
「室長には言ってない。こんなこと話すのはミランダだけだ」
ミランダがリーバーの胸に添えていた腕を、男の首裏に回した。抱きしめてくる力は相変わらず弱々しい。リーバーの息が少し苦しいのは、相手の胸に顔を押し付ける形になったからだろう。耳に直接響く相手の心臓の音がリーバーの心を落ち着かせる。
「だったら……コムイさんが同じことを考えてるかどうかなんて」
「室長は考えてる。賭けてもいい。多分、ずっと前からだ」
「リーバーさんが言うなら、そうなんでしょうけど……」
これについて、疑う気にはならなかった。彼の上司は絶対にこの教団がなくなる可能性を考えている。考えた上で、何らかの対策なり方針なりを胸に秘めている筈だ。
「あら。それじゃさっきのご飯とか服とかは……?」
「……多分、そこまでの余裕は教団に残せないってことだ。だからその、苦労させると思うが」
「そういうのは苦労といいません。やりがいって言います」
「……ありがとう」
「それに、私も内職なりどこかのお店で働くなりして」
「それはいい」
「でも」
「それこそ、オレの働き甲斐をなくさないでくれ」
「でも……」
不満そうなミランダの口を自分のそれでふさぐ。ベッドに倒れこみながら、急に強まった重力に抗う気力は今のリーバーに残っていなかった。
ミランダは覚悟を決めた。
いや、覚悟ならとっくに決まっていた。ただ、機会というか、雰囲気というか、そういうものがこれまで合わなかっただけだ。
リーバーが彼女を慮ってくれているのは分かっている。大切にされて嬉しくないわけがない。
だが、婚約もして、時々同じベッドで眠ることもあって、それなのに何もないままの現状を寂しく思うことは罪だろうか(反語)。はしたないことだろうか(重ねて反語)。というか、それを言うなら度々同じベッドで眠っていることこそ問題だ。
今日、リーバーから告げられた教団の未来には心底驚いたが、その驚きを吹き消すほどに今感じている男の体の重みが愛おしい。
自分は任務帰りだし、相手も長時間勤務明けで疲れているが、この機会を逃したら再び二人の休みが合うのはいつになることやら。
幸い、この部屋に来る前に共同風呂に浸かって軽いマッサージはしてきた。机の上には、簡易調理場で作ってきたトマトリゾットを詰めた保温ジャーもある。
聞いた限り、体力は使うがそれ程時間はかからないらしい。終わった後、一緒にリゾットを食べてゆっくり眠ったら、それはそれは充実した休憩になる、と思う。
ごくりとつばを呑み込んで、彼女の胸に寄せられたリーバーの顔を両手で持ち上げる。
「り、リーバーさん……」
それから、どう続けるつもりだったのか。後になっても、ミランダは思いつかなかった。今は更に思いつかない。何しろ、相手の目はしっかりと閉じており、口からは健やかな寝息が漏れているのだから。
「……リーバーさん~?」
ミランダは小さな声で呼びかけるが、婚約者の青年の寝顔は無邪気で安らかで、この眠り妨げるものヒュプノスの呪い受けるべしと言わんばかり。あらん限りの力を振り絞って、自分に覆いかぶさる男の大きく重い体の下から体をずらそうとするものの、自分の背中に回された相手の腕がどうしても外れない。
「リーバーさぁん」
泣きそうな声で囁くと、男は彼女を抱えたまま寝返りを打った。その左手がミランダの頭を二、三度撫でてからベッドに落ちる。自分より大きな体がのしかかる重みから解放されたはいいが、まだ男の右手が彼女の背中に残っている。耳に直接、相手の穏やかな心臓の鼓動を聞いていると、忘れていた眠気が襲ってきた。
こうなったら、彼女にできることは一つだけだ。
目の前で眠る婚約者の顔を眠気の靄ごしに眺めつつ、ミランダはがっかりしたようなほっとしたような、複雑な気持ちで目を閉じた。
前回(といっても半年以上前ですか~遠い目)はリーバーさんがおあずけくらったので、今回はミランダさんが肩すかし(笑) こういう時だけ男女平等にならなくてもいいのよ……。
この話中、リーバーさんとミランダさんは教団が勝った場合の話しかしてませんが、別に負ける可能性の方が高いことに気づいてないわけじゃないですよ。彼らなりの寝物語、になるのかな?
ここら辺をもっと詳しくドードー鳥で書きたいんですが~いつになることやら。(他人事かい)
とにかく、ありえない設定山盛りのお話に最後までおつきあい頂き、ありがとうございました!
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