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いつも拍手ありがとうございます! 励まされます!(毎度ワンパターンで申し訳ない)
ようやっと終わったラビミラ任務話ですが、無駄に長いわくどいわグダグダだわ……(今回だけで、これまでの前中後合わせたのと同じくらいの長さに~)。
なので、ななめ読み推奨、会話文だけ読めば大体の流れは分かります。分かっててなぜ書くorz
よろしければ続きをどうぞ。
後ろを振り向く勇気が無かっただけ(終)
川を背後に現れたリカルドは、にこやかにラビへ声をかける。自分に対する少年の警戒態勢に気付いているだろうに、彼の声の調子と態度は別れた一時間前と変わらない。
「気付いてましたか」
「ああ、ずっとな。ガレイの指示か?」
「はい。いざという時の盾代わりです。あなたのイノセンスは他人を守るのに向いてないようですし」
何を今更。
スーマンの例を出すまでもなく、AKUMAを破壊できさえすれば適合者すら使い捨て。それがイノセンスというものだ。
支援・守備に特化し、適合者の命を惜しむかのようなミランダのイノセンスこそ珍しい。最初の任務でリナリーがイノセンスに守られた場面を見たからか、レアケースを当然と思ってそうなのが一人いるが。
心の中でぼやくラビの隣、その一人であるミランダが疑問の声を上げる。
「盾代わり?」
「囮ともいいます。白は目立つので。AKUMAが現れた時、害獣に出くわした時、二、三秒気をそらす。そのための命です。ミランダも本部で教わったでしょう」
「え? でも」
呟くその態度は、彼女の戸惑いを雄弁に語る。教わっているのは確実なのだが、ミランダが本当の意味で理解していたかといえば、答えは否だろう。
立ち尽くすミランダを前に、リカルドはその場にしゃがみこんだ。男が両手で積もった枝と葉っぱをかき分けると、黒い円盤が姿を現す。ミランダの周囲に花が咲くような空気が広がる。顔を綻ばせ踏み出そうとする彼女を、ラビは再び押しとどめる。
「見つけたんですね」
「はい! すぐにわかりました。さあ早くガレイさんたちの所へ戻りましょう」
「そうですね……ラビさんが許してくれるのなら私もそうしたいのですが……」
「え?」
リカルドの言葉に、ミランダがラビを見上げた。自身の刻盤(タイムレコード)を目にして喜色を浮かべた顔が、あっという間に曇っていく。
「ラビくん?」
このまま黙っていればいい。さっきガレイたちと別れた場所まで、何食わぬ顔して向かえばいい。彼女が悲しむだろう真相をこの場で明らかにする義務なんて、ブックマンは負ってない。
だが。
「つけて来たのは本当にガレイの指示か? そもそもガレイは無事なん?」
ラビの口から飛び出た言葉に、リカルドは苦笑した。
「ここで無事、と言って信じますか?」
「無理さね」
「……ミランダが来たとき、これはチャンスと思ったもんだが」
リカルドの口調が変わる。ミランダはラビとリカルドの顔を交互に見比べる。オロオロと、とりなすような態度はこの任務中で何度目か。この優しさをこのファインダーは御し易しと見たか。
「あの、ラビくん? リカルドさん?」
説明を求めるミランダへ、ラビは言葉少なに真実を告げる。
「リカルドはイノセンスを売ろうとして、ここに隠したんさ。ブローカーと接触したんだろう。報酬は……金だろな」
「さすが、ジュニア。話が早い。でもそれだけじゃ安すぎる。教団からの自由も加えてもらおうか」
立ち上がったリカルドの右手には誰もが扱うことのできる黒い兵器。その銃口はミランダへ向けられている。よろめいた彼女の手首をつかむ手の力をラビは強めた。たかが銃一つ、左手に構えた彼のイノセンスを使えばどうとでもなる。
「でも、リカルドさんの奥さんは!」
「……人は忘れるもんだ。あん時は忘れられないと思ったさ。でも教団に入って、似たような境遇の奴らと話して泣いて……これからを考えるようになった。
なのに……オレは何してるんだ? たかが二、三秒エクソシストが時間を稼ぐために命かけて、無駄足ばかりの探索をして? そうして何が手に入る? もう十年になる、見返りがあって当然だろう」
男が吐き捨てた。ミランダは不意を突かれたように息を呑む。ラビは小さく息を吐く。
そうだ、時がたてば傷は癒える。思いは変わる。永遠と信じた衝動は、無知故の愚行になり替わる。
自分の受ける扱いを不当と感じ始めれば、所属する集団に対する感情はプラスからマイナス方向へと振れる。それは今回のリカルドのように積極的な裏切りまでいかずとも、消極的な怠業(サボタージュ)を引き起こす。だから、コムイが室長に就いてからファインダーにもある程度の退団の自由が認められるようになった。
とはいえ、それは記憶を操作する忘却剤の服用とひきかえだ。
副作用は不明、自分の人生の一部の喪失、そうまでして『外』に出ることを望む人間は少なかろう。
「それに……」
男が言いよどむ。まだあるのか。さっさと茶番を終わらせるか。ラビはイノセンスをつかむ力を強める。
「それに、オレの妻は、オレのリリィは本当に化け物になっていたのか?」
「え?」
ミランダは意味が分からないと、思わずといった調子で声をあげた。ラビは眉をしかめる。目の前の男がこれから言う内容を彼は想像できる。ただ、それを彼女に聞かせていいものか。再度イノセンスを握り直す。
ラビの逡巡などおかまいなしに、目の前の男の口調は熱を増していく。
「確かに、オレたちの子どもが、ジルが死んで、あいつは少しおかしくなってた。ふさいでたし、話もろくに…………でも人間だった! 結婚した頃よりやつれてたが、でも、あんたたちエクソシストがやってくるまでは、オレと一緒に育った、オレの知ってるリリィだった。あんなおかしな姿にしたのは、あんたたち……」
この時、何かがラビに警鐘を鳴らした。少年は弾かれたように地を蹴ってミランダを抱き込むと、右へ転がった。間一髪の差で、彼らが立っていた地面を銃弾が抉る。全身土にまみれながら転がる彼らを追うように響く銃声が一発、二発。これと競うようにして鳥が騒がしく鳴きわめき、羽ばたいて飛び去っていく。
ラビの目の端に映るのは、銃を構えなおすリカルド。男の持つ銃口から硝煙は出ていない。
別々の方向から飛んでくる銃弾を避けて幅のある木の陰へと転がり込んですぐ、ラビはイノセンスの柄を上へ伸ばして高所の枝に飛びのった。直後、鉄塊の柄を横へ伸ばそうと開いた口が、柔らかなものでふさがれる。
「ラビくん、待って!」
「ちょ、何す、ミランダ、バランスが! うぉ、銃、弾、当たる!」
「きゃあ!」
悲鳴をあげたいのはラビの方だ。この状態で肩に担いでいたミランダを放りださなかったのは褒められていい。彼の赤毛の端が、ミランダの団服の裾が、何発かの銃声とともに吹きとばされる。たたらを踏むラビの足をかけた枝が、撃ち込まれた着弾による衝撃でぐらぐら揺れる。
折り重なった枝葉ごし、こちらへまっすぐ向けられた二つの銃口をみとめ慌てて身を伏せたが、この枝の細さでは大して意味はない。
かといって、今から動いても下方向からの射撃を避けるのは難しい。ラビのイノセンスは便利な如意棒もどき、高速移動手段となり得るが、所詮棒は棒。軌跡は直線に限られ、弾避けの覆いは付いていない。
それでも、彼一人なら取るべき選択肢は多いのだが。
青くなって枝にしがみついている女性を一瞥するも、今彼女を切り捨てられるならとっくにしている。
となれば、彼の取るべき手段は一つ。逃げ遅れた鳥の叫び声に混じる、ラビの怒鳴り声。
「満!」
たちまちラビのイノセンスの槌部分が大きくなり、適合者とその連れを地上から隔てる盾となった。が、一時しのぎだ。次の行動へ移ろうとして、ラビは動きをとめた。ミランダの指が、ラビの服にしわを刻む。
「リカルドさんたちはどうなるの?」
「いや、今、どうにかなりそうなんはオレたちの方……」
寝っ転がって互いの目を見つめあう。時と場所が違えば非常に魅力的なシチュエーションだ。次に休暇が重なった時、試してみよう。
現実逃避しながら、次期ブックマンは言葉を探す。
「リカルドさんたちは、刻盤(タイムレコード)を持って逃げるのが目的でしょう」
「うん。そのためにオレとミランダを殺すのに抵抗もなさそうさね」
「教団から逃げられるものなの?」
「ブローカーも手伝うだろうから大丈夫かもな。たちの悪いのじゃなきゃ」
「たちの悪い?」
「イノセンスを取ったら用済みで口止め、てのも考えられる。千年公自体は喜んで金払いそうだけど。こういうもめ事、好きそうだし」
「教団は、コムイさんなら、リカルドさんたちの命を奪わないでくれるかしら?」
「どうだかね。利敵行為は時代が時代なら銃殺もんだ。ただ教団は私的組織だから上の裁量次第でどうにでもなるかも……ミランダ?」
ミランダが身を起こそうとするのを、ラビは慌てて止めた。その声に非難の色が滲む。
「急にどしたん……」
「刻盤(タイムレコード)発動」
ラビは緑の目を見開いた。
イノセンスの発動条件は、人によって異なる。
ラビは、短い東洋圏の言葉に限定しているし、神田は刃を指でなぞる動作と声をかけるという二重縛りを加えているようだ。
共通するのはイノセンスを身に着けていること。イノセンスの発動結果が、適合者の行動によって確かめられるのを考えれば自然なことだ。寄生型と対比して装備型と分類される所以だろう。
しかし、ミランダのイノセンスの能力の効果は彼女を除外する。
まさかと思う。ありえないと疑う。
自身のイノセンスを彼女はその目に映してさえいないのだ。
けれど。
「お願い、私のイノセンス。どうか時を戻して」
しぼり出すような女の声に続く空気の振動を、ラビはよく知っている。誰が願おうと命じようとその歩みを止めない筈の時間が、軋みを上げて通常とは逆方向へ戻り始める。
銃声が止み、ラビは自分のイノセンスを小さくした。視線を樹下へ向けると、三つの白い服が逆戻しに森の中へと戻っていく。まるでぜんまい仕掛けの兵隊だ。ラビは地上の様子を声もなく凝視し続ける。
この場を支配する彼女が今、どんな顔をしているのか。
確かめるため、振り向く勇気が今のラビにはなかった。
***
コムイはドアを後ろ手に閉めて、息を吐いた。ようやっと、中央庁のお小言から解放された。気を取り直して彼が視線を上げた先、闇に溶け込むような姿があった。赤い髪と緑の瞳、目立つ色合いの彼の顔は、仮面でもつけたかのように無表情だ。
「ラビ? きみ何しに……」
「あいつら、どうなったん?」
いつもは冗長なもの言いの少年が、切りつけるように問いかけてくる。コムイは気づかれないよう小さく息を吸って肩をすくめてみせた。
「自白剤を使った。ブローカーとの接触は少なかったから、特に聞き出すことはない。忘却剤を使って教団関連の記憶を消して、適当な環境へ戻して、それでお仕舞」
「罰則なしかい。綱紀が乱れんか?」
「彼らは既に罰を受けたも同じだからね。彼らが記憶を失ったということをブローカーが信じるとは思えない。まあ、これまでもそこらへんは教育してるんだけど、情勢が情勢だから……人は自分の信じたいものを信じる。負けそうな教団から勝ちそうなAKUMA側へ付いて身の保証を求めたくなる人はこれからも出てきちゃうかな」
頭の痛いことだ。そういう人間は申し出てくれさえすれば、退団を勧められるのだが。
幸か不幸か、AKUMAは常に生み出され、それに関わった者は一定の割合で教団と関わることを望む。教団へのファインダーとサポーターの供給数は、AKUMAの生成数に比例する。世界的な探索のために頭数が必要なのは確かだが、AKUMAの数が増加の一途をたどる昨今、団員を志望する者の数もうなぎ上りだ。熱意を失った者を無理に繋ぎとめるメリットは少ない。
困ったものだという意思表示は、上司から叱責される場でもしたことだ。が。
「いつからエクソシストの任務に支部の監査も入るようになった?」
さすが次期ブックマン。建前だけですませてくれそうもない。
「リンク監査官はアレンくんたちと一緒にフランスだよ?」
お約束とばかりとぼけてみせるが、相手は無言で頭を振った。分かっているだろうと無機質な光をたたえた隻眼が語る。
「今回の任務についたファインダー三人が三人とも、ブローカーと接触があった。全て偶然で片づけるのは難しいさ」
「そうかな? 効率を考えれば気の合った団員同士を組にするのは普通だし、だとしたら似た者同士でブローカーと接触があってもおかしくないだろう?」
言葉もなく寄こされる冷めた眼差しに、これ以上の誤魔化しは不要と言われた気がした。コムイの顔から表情が消える。
「彼らが教団支部へ提出するはずの試料が何度か消えてた。外部の企業に売って小遣い稼ぎをしてたらしい。証拠はどこにもない。ジジが気づいてなきゃ、監査官に口出しされる口実になってた」
「中央庁へのパフォーマンスも兼ねてたのか」
「最近うるさいからね。自分たちで始末つけられると示しとかないと」
常に真実を求めてやまない職業を生業とする少年が次の質問をするまで、少し間があいたように感じたのはコムイの気のせいだったろうか。
「やつらの尻尾をつかむためにミランダを利用したんだな」
「確証はなかった。……彼女は何というか、油断させるには適任だった。性格的にはアレイスターくんも候補に挙がったんだけど、彼のイノセンスは売りようがないから。それに」
言葉を続けるのをためらう。説明のつかない感情に揺さぶられ、コムイは目をつむる。これを口にする時の自分の気持ちを相手に晒したくなかった。これを聞くときの相手の反応を知りたくなかった。
「自衛してもらうために、事実を知っといてほしかったんだ。教団も一枚岩じゃない。教団内でも彼らを害する可能性があると、知ってるのと知らないのとでは……そうか、ミランダは知っててもどうしようもないね……できるだけ他のエクソシストと一緒にいるよう伝えとかないと。
何しろアレイスターくんとミランダは…………本当に……本当に教団(ここ)をホームと……ボクたちを家族と……思ってくれているようだから……」
言葉にした事実に胸をつかれる。ここを彼らのホームに、彼らが心安らぐ場所にしたかったのに。
コムイが目を閉じていたのは、わずかな時間だ。
しかし次に目を開けた時、そこには誰もいなかった。年若い教団司令官は、しばし黙ってその場に立ち尽くす。人が祈りを捧げるのは、こんな時だろうかと、苦い気持ちを持て余しながら。
まあこんな事件はないと思います、自分で書いといてなんですが。つか私が書くのはそんな話ばかりですが。
ところで、AKUMAに実際関わったとして、私だったら幻覚で済ませそうな気がします。いきなり現れた教団関係者にあれこれ教わっても、そうそう信じられないんじゃないかなあ。
昔はクロウリー編の村人さんたちの態度に腹立ちましたが、今はそっちのが普通と感じるあたり、自分も大きくなったもんだと。
何はともあれ、突拍子もないお話への長のお付き合いありがとうございました~。
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