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少し後ろめたくて

いつも拍手ありがとうございます!

さて、今回は一応ラビミラです。
一応というのは、前回の動画紹介のおまけとして書いたからでして。なので、ミランダさんはラビくん好きですがラビくんの気持ちは藪の中....。
すべてのはじまりは ver.L」の続きとしてご覧頂ければよいかと。

タイトルはリライトさんの「恋愛に臆病になる10の感情」から。

 
 
少し後ろめたくて


目がショボショボしている。首と肩を回すと硬い音がした。
二日ぶりの食堂で、ラビは生あくびをかみ殺しながら隻眼をこする。例の如く飲まず食わず眠らずで書庫と図書室の往復に日を費やした彼の目には、厚い雲ごしのわずかな太陽の光さえ凶器と映る。
自室へ戻ったほうが良いかもしれない。

遅ればせながら正常な判断能力が働き始めたラビだったが、自身へ向けられた熱のこもった視線にも同時に気づく。
顔を上げた先には、地中海を照らす太陽もかくやというほど明るく輝くこげ茶の瞳。

「ミランダ?」

呟きが聞こえる距離ではなかったが、熱い視線の送り主は雰囲気を感じ取ったらしい。嬉しそうに何度も頷く。ここまで素直に好意を向けられれば、傍観者を気取るラビとて悪い気はしない。カウンターで料理を受け取ってから、彼女の向かいに席を取った。
二日ぶりの食堂であること、ずっと本に囲まれていたことなどを問わず語りで口にすると、ミランダは心配しながらラビの世話を焼き始めた。「トマトはお塩?」「ドレッシングはビネガーが好きだったかしら」「パスタにオリーブオイルはどう」「オレンジジュースのおかわりを持ってきましょうか」などなど。
年上の女性から小さな子どものように扱われるのは楽しいものだ。いい気分で頷いたり首を振ったりしていたところ。

「ミランダ、自分の手元が留守になってるぞ?」

禿頭の大男がミランダの隣から注意を発した。この男が盲目だということに首を傾げたくなるのはこういう時だ。ラビにかかずらわっていた不器用な女性のこぼしたスープやパンくずを、布巾で簡単に片付けてしまう。男の親切に恐縮しきりの女。
眠気で頭がまともに働かないせいだろうか、そんな二人を眺めていると、この男はこの女性に惚れてるのだろうと自身の気持ちを外し察っしてしまう。
鋭い観察力や洞察力も時には面倒なものだ。心中ぼやきながらもラビがちぎった白パンを口に押し込んだその時、頭の後ろから声がかかった。

「ラビ! ミランダさんも。珍しいですね、この面子は。マリ、あのパッツンサムライはどうしました?」

苦笑するマリをよそに、ミランダは非常に嬉しそう。椅子から立ち上がり今にもアレンが抱えた山のような食料の一部を預かりたそうにする。

「アレンくん! リナリーちゃん、とハワードさんも……これからご飯?」
「はい、ご一緒してもいいですか?」
「それはもちろん! あ、えぇと、そのラビくんがよければ……」
「そんなの、いいに決まってますよ、ねえ、ラビ。ん? マリは構わないんですか?」
「私が文句を言うとでも? ラビは信用がないな」
「マリひどいさ~。ミランダも、何でオレだけ……あ、この前ワンコとじゃれてた時のこと言ってる?」
「え!? あぁワンコってハワードさんのこと? そういえばそんなことあったかしら。ううん、ラビくんがよければいいの、ごめんなさいね変なこといって」

落ちつかな気に指を組みかえながら腰を下ろしたミランダだったが、その後、いつにも増して言動がおかしい。マリも、というかミランダ以外の誰もが気づいてる中、当人だけが取り繕えているつもりらしい。
それでも会話は続き食事も続けていたのだが、三度目ミランダがマッシュポテトの皿を床へと落としたとき、おもむろにマリが彼女へと向き直った。

「私に嘘はつけない。わざとではないのだが……心音を聞けば大体のことは分かる。何か心配事があるようだな。それはラビとアレンに関係することだろう? よかったら相談にのらせてくれないだろうか」
「え! じゃぁ私がラビくんが好きで、ラビくんはリナリーちゃんのこと好きだってご存知なんですか?!」
「あぁ、ミランダがラビのことを好きでラビが……えぇ?!」

乱れた語尾に慌てて口を押さえたが、もう遅い。マリにしては珍しい失態だった。他の人間には火を見るよりも明らかだろうと、言葉にさえしなければミランダはマリが自分の言ったことを知っていたのだ信じ続けただろうに。
白い細面から血の気が引いていく。こげ茶の瞳を何度も瞬かせ、震える手を小さな口に押し当てる彼女が実は精霊ウィリーだったと言われても、今ならすんなり納得できる。

「す、すみません、私、何てこと……! ほんとに、本当に……生きててごめんなさい~~!!!」

実際、精霊でもここまで素早く逃げられんのではないかと思えるほどあっという間に、彼女は食堂から走り去った。
で。
ドップラー効果で奇妙にエコーのかかったセリフの消えた後のこの不気味な沈黙、裏歴史の記録者としてはどう考えるべきだろう。

「ラビ……?」
「チョッと待つさアレン、頼むからその左手しまって恐いから。コムイもどっから出てきたん、ドリル下ろせって。ユウちゃんまで、お願いだから六幻だけはやめて」
「そうよ兄さん、ちょっと過剰反応しすぎでしょう。だってねえラビ、さっきのミランダの勘違いだものね?」

リナリーが小首を傾げてラビを見上げてくる。可愛らしい少女の整った顔に浮かぶのは無邪気な確信。ここで否定できる奴がいたら教えてほしい。

「そーそー、単なる勘違い」
「そうだよねゴメン、ボクとしたことがつい条件反射で」
「いえ別に人の感情は自由なんですから他人がどうこう言う筋合いないんですよ、ただ、ここから居なくなること確定の身でこの教団のアイドルに特別な感情を抱くなんてそんな大それたことまさか、あぁそうでした、そんな彼女に仲間として好意を持つのなんて当然のことでしたね、すみません、ボクとしたことが」
「……その軽い脳みそこれ以上減らしたくなきゃ、おかしなマネしてんじゃねぇぞ」

トリプルで畳み掛けられ、ひたすら眠気で重くなった頭を下げ続ける。やはり自室に戻って頭がキチンと動くようになってからここに来るべきだった。そうすればこんな頭の痛くなる事態は避けられたのに。
マリが心配そうにこちらを見ている。彼の気持ちを知っているつもりの未来のブックマンは、先程のミランダの言動を思い出し少し後ろめたい。
けれど、鈍く密やかで置き去りにされがちな自分の感情が実のところ何を言いたいのかについて思考停止したのは、次期ブックマンとして正しかった筈。


そしてこの一月後、ブックマン師弟は黒の教団を後にした。
自分のせいでラビがエクソシストをやめてしまったとミランダが泣き崩れたのは言うまでもない。




私はブックマン師弟を追い出す話ばかり書いてるなあ....(笑)

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