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いつも拍手ありがとうございます! とても嬉しいです。
なのですが、ごめんなさい~、今回も話の途中です。
更新が1ヶ月に1回しかないのは嫌だなぁと慌てて昔の書きかけを引っ張ってきたやつです。こういうのは自分の首をしめるだけと分かってはいるんですけどね....。
さて、今回はティキさん:22歳、ミラさん:21歳。のティキミラ過去捏造パラレル。
これから何度か書き直す下書き状態ですが、よろしければ続きをどうぞ。
06. 好きも嫌いも全部ばれてる
ミランダは何も出来ないけれど、一つ同じ国同じ街に住んでいただけあって、この国の言葉や習慣はそれなりに知っている。....ミランダと同じ境遇の人間なら誰もが知っているのと同じように。
だから、知らない土地で心細いティキはミランダにこうまで関わるのだろう。
多分に善意に過ぎるきらいはあれど、ミランダは非常に的確にティキの目的を感じ取っていた。
絵本を用意していたのだ。小さな頃、両親から与えられたものが幾つか残っていた。大切にしまっていたそれを、ティキに贈って言葉の勉強に役立ててもらおうと思っていた。
喋ったり聞いたりするのはとても上手だが、字を書くことが苦手なようだったから。
優しい人だ、こんな時でもなければミランダを気遣って断りたくても断れないかもしれない。
「ミランダはオレが悪い男なら好きじゃない?」
「そんなこと」
「オレはね、ミランダが思いつかないくらい、悪い男だ。そんな男、ミランダは嫌い?」
サァッと音がしそうな勢いで顔から血の気が引いていく。ミランダの思いつく人として一番の罪悪、それは。
「ま、まさかひ、人を殺し....?」
ティキは黙って首を振る。直接とどめをさしたことはない、という内心の呟きは幸いなことにミランダには聞こえない。
何を言ってしまったのだろう、こんな賢く優しい人に向かって。
ミランダは自分の考えたことを恥じた。
悪いことは彼女だって沢山している。
まず、あちこちの仕事先で数え切れないほどの食器や道具や服をダメにしてしまった。悪気がなかったからといって許されることではない。(だから、クビにされたわけだが)
次に、いつだって他人の気持ちを苛立たせてばかりいる。これだって十分に悪いことだろう。多分、頭の働きが人よりゆっくりなせいだと思う。
そうだ、この前も買い物でお釣りを十三ペニヒ多くもらってしまった。細々と色んなものを買ったため、受け取ったとき気づけなかった。近いうちに教会へ行って懺悔をしてから寄付してきたほうが良いだろう。
ティキは頭の回転がすこぶる速いが、ぼんやりする時くらいある筈だ。彼はアチコチ国を移動してるらしい。だったら、気づいたときにはもらいすぎた賃金やお釣りを返しに行けない所まで離れてしまうことも多いだろう。慣れない土地なら教会だって簡単に見つけられないかもしれない。
思い込みの激しいのがミランダの(たくさんある)短所(のうちの一つ)だ。いつの間にか彼女の中では、ティキのした「悪いこと」が「お釣りを多くもらいすぎたこと」になっている。
「あぁあの、その、では、教会に行って懺悔」
「ミランダは?」
「すみません、私もその、この前の買い物でお釣りを多くもらってしまったので、ご一緒させて頂ければ」
「違う、ミランダはオレを許す?」
「はい?」
「ミランダが許すなら、明日にでも教会に行って懺悔してくる」
「はいぃ?」
懺悔も告解もれっきとした宗教儀式だ。カトリックなら神父、プロテスタントなら牧師。建前では神の代理人に対して罪を告白し悔いを述べ改悛を誓う。そうしてやっと、許しが得られる。
ミランダなんかが許そうが許すまいが、神と子と聖霊の名において与えられる魂の安らぎを得られるわけがない。
言わずもがなの自明の理を、ミランダは一生懸命ティキに説明した。自分の説明が下手だから相手に伝わらないのか、もしかしたらドイツ語とポルトガル語では何か決定的な表現の違いがあるのか、危ぶみながら何度も繰り返し言葉を変え身振り手振りを添え根気強く長々と。
しかしティキは、「ミランダが許さないなら行かない」の一点張り。
どうしよう。
教会に行ってキチンと懺悔しなければティキが悩み苦しむ時間が長くなる。こんなに優しくいい人が、お釣りを多くもらい過ぎてしまったというだけで。
....くどいようだが、ミランダの思いつく悪いことといったらこの程度で、彼女の中ではさっきからのティキの告白の理由は釣りを多くもらいすぎたことに違いない、になってしまっている。
「あの、私が許せばティキさんは教会にいくんですよね?」
俯いたままの頭がコクリと頷く。いつだって楽しげに笑うこの人が苦しんでいる、ように見える。たかが、なんて言ったらバチが当たりそうだが、でもお釣りを沢山もらいすぎたというだけのことで、こんなに悩み罪悪感に打ちひしがれている。何て真面目な人だろう。
「あの、その、わ、私なんかが許すだなんておこがましいこと出来るわけないんですけど、でもあの、....わた、私はティキさんが懺悔してキチンと許されてほしくて、その、....私はティキさんが何をしてても多分、いえ、絶対、許すと思い....許し、ます」
何だかズシリと肩が重くなった気がした。
キリスト教において「許す」というのは特別な意味を持つ。水に流して過去をなかったことにできてしまう多神教の日本人には生涯理解できないような深い意味が。(従って、日本生まれの日本育ちである一般的な日本人である書き手にも正確には分からず、ここら辺の細かい突っ込みはご遠慮したく)
そうして与えた許しに何のありがたみがあるのかミランダには分からないが、強張っていたティキの肩から力が抜けた。ほうと吐き出された息がミランダの手にかかる。追って、柔らかい温もりが何度も何度も彼女の指に当たるそれが、目の前の男の唇だと理解した途端、頭に血が上った。ただでさえ怪しい判断能力が、夏の日差しにさらされた氷のようにあとかたもなく溶けていく。体は逆にカチンコチンに固まって、指先一つ、舌一枚動かせない。
こういう場合、ミランダは何を言うべきなのだろう。何をするべきなのだろう。
「っ....!」
息を呑む。何か、唇ではない生温かく湿ったものに小指を包みこまれてしまった。
まだ途中。うぅ、このシリーズだけはこういう出し方したくなかった....書いてるのは自分とはいえ。
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