忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

たったそれだけのこと、なのに

わーん間に合わなかったー、のリバミラです。
班長のお誕生日ー!

それと!
いつも拍手とメール(2度目ですよ、メルフォご利用頂けたの)ありがとうございます。コメントから何となくリバミラ好きさん多いのかなと思ったのですが、他のカプ好きさんでしたら申し訳ない。

お題はいつもの通り群青三メートル手前さんから、仄恋十題より。

 
 
たったそれだけのこと、なのに


あ、また。

気がつけばミランダは隣に座る男と見つめ合っていた。
何て優しい目だろうと数秒惚けた後、慌てて計算用紙へと視線を戻す。これで何度目だろう、リーバーと視線がぶつかるのは。片手で足りないのは覚えているのだけれど。

物事を考える時、目をあちらこちらへ泳がせる癖が彼女にはある。そんな時出来の悪い生徒を急かすことなくリーバーは、計算用紙から目を離さないまま背もたれに重心をかけて待つのが常だ。少なくとも、図書室で勉強に付き合ってくれた時はそうだった。その穏やかな態度は、ミランダを励まし落ち着かせてくれたものだ。

しかし、個人所有の数学の本を貸してくれるという言葉に甘えて彼の部屋を訪れ、ついでだからと机の上に積み重なっていた本を片付け授業を始めた、教師役の男性の態度がいつもと違う。どこが、とはっきり指摘できないこと、ミランダの勘違いという可能性の方が高いことから、面と向かって聞けないが。

結果、せっかく始めた勉強がさっきから殆ど進んでいない。図書館よりも人が少なく静かなのだから、加えて参考としている本も現役数学博士が勧めるだけあってとても分かりやすいのだから、もっと集中できていいはずなのに。
リーバーは黒の教団本部の科学班長という忙しい身でせっかく自分の勉強に付き合ってくれているのだ。こんな落ち着きのないことでは呆れられてしまう。

ミランダは気持ちを引きしめ目の前の計算式に取りかかる。が、やはりどうも落ち着かない。何となく、息苦しい。頭が重い。以前、菓子作りの最中、壷に入った蜂蜜を頭からかぶったときもこんな感じだったと思いついたとき、再びリーバーとミランダの視線が絡み合った。

ミランダを取り囲む空気の密度が一気に増した。
小さく口を開けるが、上手く肺に酸素を送り込めない。空気が通らないのに、喉は叫びすぎた後みたいにカラカラだ。
まばたきの仕方も忘れてしまった。あまりに乾きすぎたせいで、涙が目の縁に溜まり始めた。息が苦しすぎるからかもしれない。思わずドレスの胸元を右手で握りしめる。

と、固定されたこげ茶の瞳の見つめる先でリーバーが目を伏せた。顔が近づいてくる。ミランダは力いっぱい目をつぶる。
年齢=彼氏がいない歴の彼女であっても、こういう時どうするかくらい知っている。
知ってるのに。

「……悪い、恐がらせたか?」

気がつけば、あれほど近くに感じていた自分以外の体温が遠くなっていた。ぽふりと気の抜けた音と一緒に、頭に男性の大きな手が置かれる。
恐る恐る目を開けると、色素の薄い瞳を細めて苦笑している男の姿が滲んでいた。今まで忘れていた呼吸を取り戻すように、激しくしゃくり上げる。肩がどうしようもなく震える。

情けない。

鶏がらのような手でミランダが自分の顔を覆うと目の前の男が慌てるような気配がした。すぐに背中に厚みのある大きな手を、手の平ごし自分以外の鼓動を感じる。骨ばった指が癖毛を撫でるような梳かすような動きでミランダの恐慌を鎮めていく。
耳に響くテノールの声は、いつだって優しく温かで心地よい。

「まあなんだ、俺はそんなに空気が読めるほうじゃないし」

そんなことあるはずがない。
大きく頭を振って否定しようとしたが、意外なほど強く彼女を囲む腕に阻まれた。

「ロマンチックなムードっていうのか? そういうのも分からないし」
「違います! ちが....」

泣きながら顔を上げる。こんな場面で涙と鼻水で顔をグチャグチャにしているミランダにそんなこと言わないでほしい。
悪いのは全て自分なのだ、リーバーに責めのあろうはずがない。

「違うんです。私、その、班長さんが優しいから、ガッカリさせてしまうのが恐くて」
「そんなことしないって」
「そしたら、勉強も教えてもらえなくなって、いえそれは残念だけど仕方なくて。でも、もう、側に居られなくなってしまったらどうしようって思って、それで」
「俺ってそんなにいい加減に見える...んだよな」
「違....」

途切れる言葉を呑み込んだ。違うのだと、どう言えば伝わるのだろう。そで口で顔を擦る。再び開いた口は、一言も喋ることなく閉じることになった。
ミランダを抱きしめる腕の力が強まる。

「あー、順番すっ飛ばすのは嫌なんだけど言っちまうな。俺な、その場しのぎの気持ちじゃないんだ。その、ずっと一緒に居てほしいって言ったら意味分かるか?」

窮屈な腕の中、ミランダは目を見開く。
もちろん分かる。リーバーを本当に思うなら、頷いてはいけないということも分かる。
頭の後ろに回っていたリーバーの手が、ミランダの右頬に添えられた。

「いい年してこんなの変だって、私、私だって、思います....でも、震えがどうしても、止まらなくて、恐くて、だから私、班長さんには相応しく....」

『ない』と。
震える声で言い切るつもりだった。リーバーは許してくれなかった。確信に満ちたテノールが語尾に重なる。

「いいんだ。淑女ってのは身持ちが堅いもんだ」
「真の逆は真ならず。教えてくれたのは班長さんでしょう?」

ミランダのできる最後の抵抗。あっさりと封じる男が上手なのか、封じられる女が男を知らなすぎるのか。

「俺にとって、淑女といえるのはミランダだけなんだけどな」

それも信じてくれないんだろ?
これがとどめとなった。ミランダの体温が急激に上がる。
もはや彼女にできるのは、全面降伏を蚊のなくような声で相手に伝えることだけで。

「....私にとって、班長さん以上の紳士はいません」

言った途端、ミランダの腰が更に強く引き寄せられる。見つめ合う男の顔には満面の笑顔。

「そりゃ最高だな。で、俺はいつまで班長のままなんだ?」

何が言いたいのだろう。言葉で尋ねる代わりに首を傾げてみせる。自分の説明が下手なのは今日一日で骨身に沁みた。

「俺はずっと前からミランダって呼んでるよな?」

やはりリーバーは説明が上手だ。ミランダは瞬時に何を言われたか理解し、彼の白衣を握りこむ。
ただ名前を呼ぶだけだ。
たったそれだけのこと、なのに。

「....り、リーバーさん 、....す 好きです

それだけのことができなかった。
囁き声より小さい吐息で、告げてしまった零れる思い。
可聴音域すれすれのミランダの決死の告白はリーバーへと間違って伝わってしまったらしい。とういうのも次の瞬間、彼女は絞め殺されそうな勢いで抱きすくめられ、いきなりキスされたのだから。

そんなわけで、ミランダが泣いて科学班長の部屋を飛び出し階段を転げ落ち右足捻挫で一週間の静養を婦長から命じられた同時刻、リーバーが睡眠不足で死ねそうな程の仕事を与えられたのは、多分泣き虫で説明の下手な女エクソシストのせいだ。

間違いない。






とあるリーバーさん誕生日お祝いサイトさんへ差し上げようと書き始めたお話。今日は....9/18? 予告も何もしなくてよかった(笑)
やはり私にイベントものは無理ですな。
とりあえず、リーバーさんお誕生日おめでとう!

PR

Copyright © 黒灰碧 : All rights reserved

「黒灰碧」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]