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胃にやさしいお薬です

拍手ありがとうございます! 連続で押して頂いたりしてうれしいです。

さて今回は、リバミラでバレンタインになります。またもや遅刻ですが~。リーバーさん意外とイベントこなしてってる?

お話の時間軸は、元帥襲撃編(単行本5巻あたり)より前のつもりです。辻褄なんて気にしない(笑)
よろしければ続きからどうぞ~。

 
 
胃にやさしいお薬です


ミランダは迷っていた。
右手がにぎりしめた真鍮の取っ手をまわせば行く手を遮る大きな扉が開く。その先にはリーバーがいるはずだ。ここへ来る前に彼の部下から聞いたからいると思う。いてほしい。いや、いてほしくない。
どちらだろう。
ジェリーが持たせてくれた紙包みを左手で確かめながら、ミランダは何度目か自問自答する。答えは出ない。だから握りこんだノブを回せない。足を踏み出せない。

ここ黒の教団ではイベントがたくさん開催される。親睦を深めるのがねらいという。教団をホームと呼び所属員を家族と思う妹のため、室長を務める青年が世界中の祝日を調べ取り入れ参加を呼び掛けるようになったらしい。
今日もそんなイベントデイの一日で、親しい人同士でカードや花束、チョコレートを贈り合う。これを口実に恋の告白をする人も多いとか。
ジェリーから説明されたとき、後半部分を意図的に聞き流した彼女が真っ先に思い浮かべたのは白髪の少年と黒髪の少女だった。が、彼らは今、任務で遠いアジアの地を移動中。せめて声だけでも伝えたいとの希望は先ほど叶えられ、次に思い浮かべたジェリーからは気持ちだけで十分と苦笑されてしまった。
次いで浮かびかけた顔を全力で抑え込み、ではここへ来てから世話になった人たちへ花を一輪ずつと庭へ向かいかけたミランダを、ジェリーは困った子どもを見るような目で押しとどめ、手品のごとく小さな紙包みを取り出してみせた。

『チョコレートは油が多いから胃に優しそうなマルコボーロにしてみたわ、ほら、さっさと渡してきなさいな』

言葉や紙包みと一緒に色の濃い色のサングラスで見えないはずのジェリーの目から見事なウィンクをもらったとき、どうやらミランダは魔法をかけられたようだ。でなければまっすぐ科学班の仕事場へたどり着けるはずがない。
しかし魔法は解けるもの。
それが目当ての人物を見つけた後ならよかったのだが、あいにく彼は不在ときた。教えてもらった行先へやってきたはいいが、今のミランダはここから逃げたくてしょうがない。

先程のやりとりを思い出す。ジェリーはミランダの気持ちなどお見通しらしい。感情を隠すのが苦手だという自覚は、ミランダにもあった。が、実際目の当たりにするのとは違う。恥ずかしさで顔から火が出そうだ。
何しろ、一方的な思いだ。勝手に苦手意識を持って、時とともにほぐれていった気持ち。尊敬とか好意とか友情のような気持ちがたくさん混ざっていて、これと一つに決められない。しかも相手の気持ちはわからない。

嫌われてはいない、と思う。
自分にも他人にも厳しい人で、大声で怒る姿をよくみかける。が、そういったことを怖がるミランダを気遣って極力穏やかに話そうと努めてくれる。よく失敗しているが。
想像もつかないほど頭がよくて、食堂で偶然隣の席に座ったときなど宇宙の始まりから原子分子の成り立ちまで絵本を読むように教えてくれる。ミランダ相手では猫に小判でもったいないと伝えれば、それは光栄と太陽みたいに笑う。

多分、リーバーはコムイ以外の誰に対しても同じように優しいのだ。一番厳しく見えるコムイへの態度すら、上司である彼が望んでいるからではないかと感じられる節がある。
だからきっと、ミランダが思うようにリーバーのことを思っている人は必ずいる。ミランダ以上に一途に真摯に純粋に、ミランダよりも長い時間をかけて育んだ思いを、今日のこの日に伝えようとしているかもしれない。

ミランダは一度、頭を振った。大きく深呼吸する。
心は決まった。
逃げよう。

ミランダは踵を返した。
せっかくジェリーが用意してくれたお菓子を無駄にしてしまうと思うと今から胃が痛むが、明日にでも何かのついでを装ってリーバーの机に置いてこよう。そうしよう。

視線を床に落として足を前に出そうとして、なのに、何だってミランダの手はドアノブから離れてくれないのだろう。
我ながら諦めの悪さにうんざりする。
ひとしきり落ち込んで気がすんだか、抱え込んだ右手を左手で押さえて三歩進んだ彼女は、何かにぶつかりグラリとよろめく。のを支えたのは、薄いミランダの肩をつかんだ大きな手だった。

「悪い、目測が外れた」

かけられた声に耳を疑う。顔を上げたミランダの前にはリーバーが立っていた。

一瞬呆けて、直後あわてて左手ごと紙包みを体の後ろに隠すが、不思議なことにリーバーも同じ格好をしていた。おまけに、何か言いかけて口を開いては閉じることを何度か繰りかえす。いつもさっぱりさっくり話の要点をつく彼にしては珍しい。
そう観察しているミランダも、体中の血が集まっていそうなほど真っ赤な顔をして今日の天気についてもごもごと口の中で呟いているのだ。ここにいるのがこの朴念仁二人でなければ、互いの気持ちなど火を見るよりも明らかで、さっさと大団円を迎えそうなものだが。

意味のないやりとりがしばらく続いた後、まずはリーバーが意を決したようにミランダを呼んだ。

「ミランダはユリの花が好きなんだよな?」
「え……あ!」

一瞬相手の言う意味をつかみかねたが、ミランダの脳裏にひと月前のやりとりがよみがえった。ユリを抱えたリナリーの写真をコムイから見せてもらった時のことだ。人物込みで好きだと答えたあんな短いやり取りを、この人は覚えていてくれたのだ。胸がいっぱいで言葉が出てこない。代わりに、首をこくこくと上下させる。小さく吐かれた息はどちらのものだったか。

「今日のイベントの説明、ジェリーから聞いたか?」
「……はい」

再びミランダは頷いた。そろそろと左手を胸元へと引き寄せる。花の香りがふんわりと漂ってくる。ユリの花の匂いは強くて病人へのお見舞いにするのを禁じられるほどだから。
香りを追いかけてバサリと彼女へ差し出されたのはオレンジ、黒、白、色とりどりのユリの花。

「よかった。じゃ、これ、受け取ってくれるか?」
「……わ、私も……! すみません、ジェリーさんに作ってもらったものなんですけど、いえ、私が作るよりよほどおいしいですし、あと胃に優しいお菓子なので、その、これをもらってくれませんか?」

思い切って上げたミランダの視線が、強いリーバーのまなざしとぶつかった。
息をとめたまま両手で差し出すと、相手の手の中に小さな包みが納まった。大きな花束を全身で抱きかかえ、ミランダは背後のドアへともたれかかり、そのままずるずると座り込んでしまった。膝から力が抜けて立っていられない。焦ってかけ寄ったリーバーだったが、花のようなミランダの笑顔に見上げられ表情を緩めた。

「なんか、変だな。オレたち」
「そうですね。季節のごあいさつにこんな緊張して」
「長い付き合いになりそうだしな。最初はこんなもんだ」
「はい」

ニコニコと罪のない笑顔を交わし合いながら、二人はこれ以上ないほどの満足感に包まれ確かに幸せだった。
らしい。




先日の連休に育児休暇中の友人宅へお邪魔したんですよ。赤ちゃんがか~わい~かったです。手足がボンレスハムみたい。座るのもハイハイするのも一生懸命で、私が渡したマルコボーロ食べてくれました!
という嬉しさから今回のお話に(笑)
まあ赤ちゃんが食べるものなら万年胃痛もちのリーバーさんにも害にはならんだろうて。
でもたぶん、マルコボーロって商品名だよね……。このお話の舞台は仮想とはいえ19世紀末の欧州…………まあいいか(投げた)。

それはともかく、リバミラは不純なのがいいかなあ。苦みとか甘みとか、ずるさとか不器用さがいっしょくたになった感じで最後はハッピーエンド♥とか。
例のごとく分かりづらいですが、このお話ではまだ告白してません。もどかしいのやじれったいのが、書いてる人間の大好物です(笑)

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