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今回はリバさんミラさん小話です。
ただし、ご注意! 今回のお話は突っ込んだら負けです(笑)何とな~くの雰囲気をお楽しみください。
そしてこれは前編です。(小話じゃなかったのか)
よろしければどうぞ。
ドードー鳥はアンモナイトの夢を見たか
書き仕事をしている最中ふと目を上げたら自分のそばに上司が立っていて、何も言わずにじ~っと自分を見下ろしていた。
そんな経験のある人間は多いだろう。黒の教団本部科学班に所属するリーバーもその一人だ。
ただしこれは非常に心臓に悪い上に、自分がリアクションを起こす前に上司の出方を伺わなければならないので効率も悪い。
できれば止めてほしいのだがと、ぼんやり考える霞がかった頭に相手のすっとぼけた声がストンと落ちてきた。
「あっれ、リーバー君? もうお休み? 最近早いんじゃな~い」
「....単にメシ食いに行くだけでしょうが。ついでに言わせてもらいますけどね、いま午前一時ですから。早いんじゃなくて遅すぎですから」
呑気な仕草でヒョイとリーバーの作業机をのぞきこんできたこの東洋人、名をコムイ・リーという。夏の夜を溶かし込んだように艶やかな黒髪・黒目の持ち主で、顔の造作も悪くない。これで頭がバカと紙一重の天才でなければ、結婚相手に不自由しなかっただろう。
寝不足のためよく回らない頭で、リーバーは直属の上司をそう評してみる。死んだ魚のような目で評価対象を眺めつつ。
かくいうリーバーの髪の色はくすんだ金色で、瞳は淡青色、あごには無精ひげがポツポツと、目が垂れぎみなのはご愛嬌。独身貴族という妻帯者からうらやまれる階級に属している。
また、観察対象(コムイ)の肩書き....二十代前半から三十才目前の今まで数千人規模ともいわれる黒の教団の実質トップという地位は、世の女性たちの目にかなりの欠点を補っても余りあるほど魅力的に映るだろう、と考える程度の常識が身についているのも変わり者ぞろいのこの組織の中で長所と評価されてよいはずだ。
「へぇ、ご飯食べれるようになったんだ? 固形物がのどを通らないって言ってたの、いつだったっけ?」
「三年前から一昨日まで、何日かごとに言ってますよ。ソレ覚えてんなら少しは仕事進めてオレの分担減らしてください。つーか最近室長の仕事まざってませんか、オレのとこに」
「それはね、ステップアップの前に少しは慣れといた方がいいんじゃないかっていうボクの仏心....」
「いりませんから。だいたいステップアップって何すか。科学班班長の上っつったら室長くらいしかないでしょう。オレ嫌ですよ、大元帥たちのイヤミ聞かされるの」
「とかなんとか言いながら、リーバー君、何出てこうとしてんの」
「耳遠くなったんですか。若年性健忘症だけはやめといてくださいよ、この時期に」
上司が何を言いに来たのかは知らないが、十五分程度の夜食を食堂で取っても罰はあたるまい。何しろ最後にベッドで眠れたのは二週間も前だ。
鉛筆を机に転がし資料を大雑把な分類ごとにまとめたリーバーは、開けっ放しになっているドアから出て行こうとして、足を止めた。
「ミス・ドードーは随分と科学班の皆に人気があるみたいだね?」
「....まだそんなこと言ってる奴がいたんですか」
「まぁ基本、皆あだ名つけるの好きだし。彼女にピッタリだし。リーバー君だってそう思ってるからそんな嫌そーな顔するんでしょ?」
コムイに指摘されたリーバーは自分の頬に手をあててみる。常にない力を手の平ごしに感じる。眉間に皺が寄っている。視界が少しだけハッキリしたのは、目を細めたからだ。
「否定はしませんよ。確かに彼女は考えるのが遅い。物覚えも悪いかもしれない。だからって理解力が平均よりも劣っている、彼女の考えが無駄だというのでしたら....」
時刻が夜である上に寝不足が続いていた。そのせいだ、感情的になっているのは。
リーバーが自分でも不思議なほどケンカ腰に振り向くと、コムイは楽しそうに笑っていた。
「まさか! 無駄なものなんてこの世にあるわけないじゃん。彼女が来てくれてから仕事の効率あがってるの、知らないわけじゃないでしょ? 淑女のコンパニオン職ってボクはあんま好きじゃなかったんだけど、やっぱ話し相手がいるって大事だよね」
「....わざわざそんなコト言いに来たんですか、仕事さぼって」
「少しくらい骨休みしたっていいでしょ。どんだけ頑張ったってリナリーがコーヒー淹れてくれるわけでもないんだし」
唇を尖らせる上司の幼い仕草を見て、リーバーの肩にどっと疲れが押し寄せる。
踵をかえしてヨロヨロとドアに手をかけ。
「で、いつマルティンに今の実験は失敗だって教えてあげるつもり?」
「!」
予想以上の近くで聞こえた言葉に思わずふりむくと、手が届きそうで届かない距離にコムイが立っていた。
顔は笑っているが目が鋭い。
リーバーは一度天を仰いで、覚悟を決めた。長身痩躯の司令官を真正面から見つめる。
「もう少しやらせてやりたいと思ってたんですが」
「この報告書よくできてたよ。誤差のない実験なんて初めて見た」
「マルティンも今じゃなければ不自然さに気づいたと思います」
「だね。そんでマルティンの実験に関するリーバー君の報告書はいつ見せてもらえるのかな」
そこまで気づいてたのか。
リーバーはこれで何度目になるか、ツバと一緒に苦い気持ちを飲み下す。
「オレの専門でないことは分かってます」
「そ? 解析学は君の得意分野じゃなかったっけ?」
「オレは....なんで虚数軸が時間軸になるのか分かりません」
「『分からない』んじゃなくて『分かりたくない』でしょ?」
「室長とは違います。本当に....分からないんです、何だってマルティンが複素数空間使って計算なんぞ始めたのか、なんだって彼女がその計算式を当然のごとく受けいれてあいつの計算間違いを指摘できるのか」
「だとしたら、君の報告書は彼女の能力についてじゃないのかぁ。ん~とイノセンスと適合者との相互作用の不均衡? だったっけ? そこらへん?」
「まだ、お見せできる段階ではありません」
「それ決めるの、リーバー君じゃないんじゃない? あさってまでに一旦まとめてボクに提出して」
「分かりました」
「あっとゴメン、食堂に行くんだったね。じゃ、ヨロシク」
これまでの鋭い視線はどこへやら、語尾にハートマークでもくっつきそうな軽い口調で指示した後、細い指をヒラヒラさせてコムイは執務室への道を戻っていった。
その高く線の細い背中をリーバーは魂が抜けそうなため息をつきつつ見送る。それから両手で自分の頬を強めに叩いて気をとりなおし、何かに気づいたように部屋のカギを外から閉めた。向かうのはもちろん食堂である。
ははは、続きます。
参考資料は例の如くWikiと学問板in巨大掲示板(笑)
お話に必要なのはリアリティ、つまり『それっぽさ』であって正確かどうか、本当かどうかは些細な問題なのよ、なんていってみるテスト(笑)
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