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本誌156夜を読んで思いついたマリミラ小話。
相手が相手だとこんなにほのぼのになるんだ!(笑)
あなたは困った人ですね
夜空を見上げても星は見えない。薄っすら漂う白い靄。朧な視界にそびえ立つは黒の塔。神の使徒たちに束の間の安らぎを約束する、堅牢な砦。
明日には誰もいなくなる、ミランダを初めて受け入れてくれた場所。
黒髪・黒瞳にも見える痩せた女が小さな中庭に立っていた。昼なら陽光が溢れ、寛ぎを求める教団の人間が木でできた可愛らしいベンチで日向ぼっこを楽しむ姿が見られるこの場所も、明日には教団本部が丸ごと引越すとあって誰もいない。
寂しげな風情の庭を見渡し、彼女は....ミランダはひっそりと微笑んだ。
彼女はここが好きだった。
戦争の真っ只中に引っ張りこまれたも同然であるといえ自分を初めて受け入れてくれたこの教団が、教団の堅牢な建物の中にあって手を入れている気配がなく雑草がてんでバラバラに花を咲かせているこの中庭が、好きだった。
けれど、彼女がここに立つことは恐らく二度とない。
それが寂しくて、最後に一目だけと寝ていたベッドを一人抜け出して来たのだが。
「ミランダ、ミランダ=ロットー。いますよね、どこですか、応えてください」
静寂を破るでなく、穏やかな呼びかけが聞こえてくる。見知った声に知らずミランダの頬が弛む。
マリさん、ここです、私はここに居ます。
ミランダが囁くと、回廊の陰から体の大きな男性がホッとした様子で姿を現した。そして、
「ミランダ、そこにいたのですか?」
言うや否や、相手はバサリと自分が羽織っていた上着を彼女に着せ掛ける。ミランダは驚かない。彼女を探す彼の声を聞いた時から、自分の居場所を彼に教えた時から、きっと気遣いに溢れたこの人ならこうするだろうと思っていたので。
それでも、問いかけるように相手の名前を囁く。
「マリさん?」
「ミランダ、ここは標高が高い。緯度も高い。夜ともなれば10℃を切ります。おまけにアナタは先の戦いで消耗が激しく安静が必要です。早く病室に戻りなさい」
すると、雨あられと降りかかってくる心配する言葉。優しい言葉。着せ掛けられた上着より余程彼女を温めてくれる。
「すみません、何だか眠れなくて」
「本当に眠っていなければいけないとは言ってません。ただ、病室にいればいいのです」
「でも」
「貴女はあのAKUMA来襲の際、本当によく頑張りました。貴女が休むことに文句を言う人などここにはいません」
「でも、神田君やアレン君はもう鍛錬も始めて....」
「あの二人にも困ったものです。いっそ貴女から言って下さい。『貴方たちがゆっくり休んでいてくれないと私もおちおち寝ていられない』と」
「そんな、私なんかが言っても....」
「モノは試しと言うでしょう。本当に困った子たちです」
「子?」
「神田はまだ18歳、アレン君にいたっては15歳。まだまだ子どもです」
目を丸くしているミランダに、マリは嘆息してみせる。そう言われればそうだった。あまりに強いから忘れてしまいがちだけれど。
「そうですよね、アレン君たちはまだ子どもで。私は大人なんだから、もっとしっかりして支えてあげないと」
「いえ。貴女はそのままでいいです」
「? マリさん?」
「気に触ったなら失礼。でも、本当にそう思うのです。貴女は十分、彼らを支えています。だから、ゆっくり休んで元気になるのが....まぁ、戦争の最中に元気になるもならないもないのでしょうが....とりあえず万全の状態でいることが、貴女が彼らにできる一番のことです」
「....それは、暗に私が何かしようとするのは迷惑だって言ってますか?」
「そんなことは! ....ミランダ?」
これ見よがしにうな垂れたミランダの肩を、慌ててマリが掴む。が、俯いた彼女の口からクスクスと空気をくすぐる様な声が零れるのに気づいて、慌てて手を離した。ミランダが目を上げると、眉尻を下げ首を回し途方にくれたようなマリがいた。パチリと視線が合う。と、彼は自分の気持ちを正直に零す。
「ミランダ、アナタは困った人です」
「神田君とどっちがですか?」
他の人から言われたなら、飛び上がって謝り倒して泣きながら逃げ出す言葉。それなのに、今、ミランダは笑って切り返す。不思議だ。相手が彼であるというだけで、少しも恐くない。恐くないどころでない。嬉しい。
黙り込んでしまった相手の腕に、そっと薄っぺらい体を寄せる。直接触れて確かめる、太い腕。大きな体。
厚い服越しに感じる相手の存在が心地良い。相手は居心地悪そうだが、ミランダを振り払うこともできずにいる。目を遠くへやりながら、同じ言葉を繰り返した。
「ミランダ=ロットー、アナタは本当に困った人ですね」
「はい」
ニコニコと。笑って頷く。
もちろん、ミランダはこの居心地の良い場所から一ミリだって動く気などない。頭の上から今度はため息が降ってきた。彼以外ならこれまたミランダを傷つけるだけのものでしかないのだが。
ミランダは笑みを深めて頭を相手の肩に預ける。相手の優しさにつけこんでいる自覚はあるが、どうしても今、この人の側から離れる気になれない。
そんなこんなで、彼らは冷たい夜気の中、しばし体を寄せ合い過ごしたのであった。
ところでマリさんて何歳なんだろ。
「マリのおっさん」とデイシャさんが言ってたから三十台前半~四十くらい?
でも、男の子って若くても貫禄ある人を「オヤジ」とか「ジジイ」なんてアダ名で呼んだりするから。そもそもディシャさん自身が何歳?
実はミランダさんより年下でも、全然構わないよん。
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