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さて、今回はいつにも増してありえない設定のラビ+ミラ。
タイトルは群青三メートル手前さんの沁々三十題より。
隣に並んでいたかった
ミランダがブックマン見習いになった。
女なのにブック『マン』はどうなんだとか、ブックマン・ジュニアが単行本7、8、13巻あたりで延々と苦しんだあの葛藤は何だったんだとか、そもそも物覚えが悪いと言われているミランダに裏の歴史が覚えていられるのかと、小一時間問い質す間もなく元ブックマンは他界した。ミランダに次期ブックマンの資格を認めた直後のことだった。
戦争中だったので遺体をキチンと埋葬する暇はなかったけれど、死に顔がとても安らかだったことがラビと名乗っていた青年の心を幾らか軽くしてくれた。
そんなわけで、馬にひかれた荷台の上、少し前までラビと呼ばれていた男は藁と彼の弟子と一緒に揺られている。酷いでこぼこ道で何か喋ると舌を噛みそうだから、もう一時間くらい黙ったまま。
彼と肩を並べた女も黙っている。流れていくのどかな田園風景をダークブラウンの瞳に映してはいるものの、その実何も覚えていないのは行動を共にするようになった最初の一日で分かった。
ようやっと道が平らになり口を開いても大丈夫だと判断したブックマンは自分の弟子に声をかける。
「ミランダ、次行くトコ覚えてる? ってか、次に使う名前さ、ミランダ以外で決めて欲しいんだけど」
「ごめんなさいラビ君、でも私多分、ミランダ以外で呼ばれても返事ができないと思....」
「ミランダ!」
「うぅ、何だってブックマンは私にブックマンが務まるなんて早とちりを....」
「ジジイだけじゃないさ。あん時はオレもアンタが次のブックマンだって分かった。アンタだって頷いただろ? だからもうアンタがオレの次のブックマン! 『やっぱ止めた』てのはナシ」
「だってあの時はブックマンが酷い状態で! 断れる雰囲気じゃ....」
「へー、んじゃ今から黒の教団に戻る? んでエクソシスト正式に廃業してまたドイツに戻って失業人生やり直し?」
「....もしかしたら今度はクビにならないで長続きできる仕事がみつかるかも」
「ふ~ん? 例えば誰かのお嫁さん、とか?」
ブックマンが意地悪く片頬を歪めてチロリと視線を流してやれば、ミランダが真っ赤に染まった顔を両手で押さえていた。
が、見る見るうちにションボリと肩を落とした。
「ううん、それは無理。私がお嫁さんなんて、天と地がひっくり返ったってないわ」
「....無理じゃなかったと思うけどねぇ」
「ありがとう、ラビ君。お世辞だって分かってるけど....嬉しい」
寂しそうに微笑んでこちらを見返す彼女の表情に、師は続けようとした言葉を飲み込む。
別にさっきのはお世辞でも気休めでもなかった。彼女に思いを寄せる男は教団にいくらでもいた。彼女が思いを寄せていた男だって、彼女を誰より大切に思っていた。千年公との戦争が終わった今、彼女が望めばドイツだかオーストリアだかで二人のんびりと暮らせた筈だ。
「マリはどうしてっかなぁ」
唐突に思い人の名前を聞かされたブックマン見習いは、一瞬体を強張らせた後で俯き唇を噛んだ。
「オーストリアに戻って音楽家になるつもりだって....教団を出る時に教えてくれたわ」
「....気持ちは伝えなかったん?」
「何でラビ君が知って....そ、そんなにバレバレだった?」
「ん~まぁ、分かりやすかったかな」
マリ以外には。
心の中で呟くブックマンのセリフには気づかず、次期ブックマンはクスンと鼻をならした。
「マリさんには幸せになってほしかったの....マリさん優しいから....変なこと言ったらきっと悩ませちゃうでしょ。....戦争中に悩み事あったら命に関わると思って。で、でも戦争が終わったら、そしたら言ってもいいかな、て思ってた....んだけ....ど......」
涙ぐむ彼女の、小さく震える華奢な肩をブックマンは右手で抱き寄せる。心中ため息を禁じえない。
この女性らしい話だ。きっと相手の男も似たような考えだったのだろう。
そして皮肉な話でもある。そういった彼らの優しさが二人の人生を永遠に別れ別れのものとしてしまった。
もし戦争の最中であっても気持ちを確かめ合っていれば、彼女はブックマンの後ろを歩くことはなかったのではなかろうか。裏の歴史を記す者として人生を終えることはなかったのではなかろうか。
想像しても詮ないことを飽きずに考えながら、自分の肩に遠慮がちに寄せられた小さな頭と髪を撫で続ける。首の後ろで一つに縛り背中に流している彼女の髪は、彼と初めて会った時より随分と長くなった。もっと長くのばすつもりなのか、いつかサッパリ切ってしまうつもりかは知らないが、その姿を彼女の思い人がかつてのように手で確かめることはない。
金色に波打つ小麦畑を目に映しつつ、隻眼の持ち主は二度と戻らぬ光景を脳裏に描く。あんなにもどかしくも微笑ましい光景をいつかまた見られるといいなと思いながら。
すると。
「ラビ君は、その、気持ちを伝えなくてよかったの?」
「んん?」
「だって、ラビ君....リナリーちゃんのこと、好きだったでしょ?」
「....あちゃー、バレてたか。ブックマン失格さね」
気遣わしげな視線に茶化した口調と表情で応じながら、赤髪の青年は多分二度と会うことのないだろう美しい少女の幻を見る。重力を感じさせない動きは蝶のようで、華やかな雰囲気はバラのようだった。仲間を慮る優しさは聖女を思わせ、敵と対峙する時の凛々しさは戦乙女を思わせた。
戦争が終わった後、傷だらけの顔に満面の笑みを浮かべて大学に通うのだとかの少女は宣言した。兄のトンデモ発明を無効に出来るくらいの科学者になってみせると意気込んで。
それを聞いたブックマンは碧の目を細め『リナリーらしい』と笑い包帯の巻かれた額にキスを落としてから、『元気で』と手を振った。
その時に彼女の隣に立っていた白髪の少年が見せた複雑そうな表情は、今思い出しても胸がすく。
「私ね、アレン君とリナリーちゃんが一緒に居るところ見るの、好きだったの。何だかすごく自然な感じがして。でも....ラビ君がリナリーちゃんに笑いかけるのを見るのも、好きだったわ。こんなこと言うと怒られるかしら、でもどこか微笑ましい気がして」
尻すぼみになる弟子の言葉を聞いて師は声を出さずに笑って頷いた。確かに端から見れば、随分と心温まる光景だ。決して叶わぬと知りながら、一人の少女を思い続ける未熟な青年の姿は。
「まぁ、オレたちゃブックマンだかんね。戦争が終われば戦争を探しに行かなきゃだし」
「そうよね、戦争が起こったら大変だものね。....私なんかで役にたてることがあるといいんだけど」
涙を拭いながらどこかブックマンの役目を勘違いしたことを言うミランダにラビと名乗っていた青年は笑みを深める。
これから先、沢山の戦を目にして彼女がどう変わっていくのか、それとも変わらずにいるのかは分からないけれど。
とりあえず。
「で、ミランダ? 名前は決まったさ?」
「ええーと....ミラベル、とかどうかしら」
「次の次の記録地では?」
「え、そしたらまたミランダとか」
「あのさ、同じ名前は二度と使えないって言ったさ、オレ」
「ゴメンなさい! でもラビ君」
「それと! オレはもうブックマン。ラビはナシ」
「う~、ごめんなさい、ラビく....」
「ミランダ!」
こんなに早く見つけられたこの年上の弟子に、自分の呼び方を覚えさせるのが先らしい。
うわー、約一ヶ月ぶりの更新!
まだグダグダだけど、ラビミラになってないけど、ここで一応エンド。
ブックマンの資格? 私の方が知りたいです(笑)
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