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ブックマンJr.の備忘録、管理番号:153 4

前回からの続きです。ようやっとラスト。長かった!



「ミランダ」
ラビは膝をついた。
「あんたさ、戦争には向いてないさ」
ピクリと目の前の体が震えた。
「とっても感謝してる。ありがとさ。
 ミランダがいなければ、オレたちはこんなに早く日本に向かえなかった。オレたちの怪我も...少しずつ回復してるんだろ? 自然治癒の速度でだけど。何となくわかるさ。自分の体だから」

うな垂れたまま、大げさなくらいに首を横に振る女性。違う、私の能力は単に見せかけのものでしかないとしゃくりあげる。…自分の能力を卑下することしか出来ない女性。
掴んでいた二の腕から手を離し、頭にポンと手を置いた。
年上の女性に対してする仕草ではなかったが、無性に甘えさせてやりたかった。先程の八つ当たりの(その結果の思い出したくなかっただろう出来事を無理矢理言わせた)償いにはならないけれど。

「今すぐにってわけにはいかないけど。日本に着いたら...クロス元帥が見つかったらさ、教団に戻った方がいいさ」

戻ったからといって、おかしな実験につき合わされない保証はないけれど。
自分の能力が関わったばかりに、赤の他人の死に対してすらトラウマの兆候が見られる。
この儚げな女性が、これから先予想される味方の死に耐えられるとは、ラビには思えない。
常に冷静な次期ブックマンとして、適切な忠告をしたつもりだった。

が。
ミランダが顔を上げた。クマに囲まれ涙を流し続ける瞳に宿る、強い光。
胸の前。握った両手を重ね合わせる。自らの手の甲を包み込むようにして。

「私はエクソシストです」
「ミランダ、だから...」
「私はアレン君に約束しました。『次にお会いする時はエクソシストとしてお役に立ちます』と」
ラビの目が険しくなる。
何を言っているんだ、この女性は。アレンは、あの白髪の少年は...!

先程の憤りが蘇る。のを必死に否定する。違う、この女性は関係ない。
アレンの死に際に間に合わなかったのは、彼女だけじゃない。彼女の能力があの時使われたとして、アレンが助かったとは思えない。

ここまで考え、ラビは愕然とした。
ミランダの能力を使えば、今からでもアレンの死の場面まで時を巻き戻せるのではないかと...戻してほしいと考えている自分に気づいたからだ。
傍観者たるべき自分が。物事をあるがままに観察し記録するブックマンJr.が。
事もあろうに、歴史の改竄(かいざん)を望もうとしている?

ことここに至りラビはようやっと。
ようやっと、ミランダの能力......時を巻き戻すことの意味を理解し、恐れた。
この能力は危険だ。
自分まで教団の科学者連中と同じ轍を踏むところだった。

ラビの懊悩をよそに、ミランダは乱暴に目元をこすって唇を引き結んだ。
「だから私は、エクソシストとして、皆さんのお役に立ちます。アレン君にもう一度会った時、恥ずかしくないように。
 私を選んでくれた...見捨てないで居てくれた、タイムレコードを侮辱することのないように」
少し低目の落ち着いた声で告げられた彼女の決意は、ラビを打ちのめした。

クマに囲まれた大きな目。土気色に近い肌の色。骨と皮だけで構成されたような細い体、赤の他人の死にすら責任を感じる繊細な神経。これら全てがミランダ=ロットー、目の前のエクソシストを構成する要素。
絶望的なアレンの死の場景を目にして(ティム・キャンピーの映像を彼女が夜中、こっそりと眺めいたのをラビは知っている)尚、彼との再会を信じている心の強さ(もしくは諦めの悪さ)。


このイノセンスが、なぜミランダを選んだのか。(『選ぶ』などと、まるでイノセンスに意思があるかのように考えていること事態が驚きだ)
イノセンスに意思などない、適合・不適合など化学反応の延長と割り切り、自らの槌(イノセンス)を振るって来たラビにも分かるような気がした。



ミランダのイノセンスの能力は。
酷いものかもしれない。強大なものなのかもしれない。何の役にも立たないのかもしれない。多くの奇跡を起こすかもしれない。
そんな、まだ見ぬ未来はラビの記録の対象とならない。

ただ。
将来のブックマンは。
過去と現在をありのままに記録する。

「ミランダ=ロットー、時軸のエクソシスト。所有イノセンスはタイムレコード、装備型。
 一定量であれば時間を吸い込み、一時的な傷・体力の回復が可能。ただし、使用者本人に対してこの能力の使用は不可能。
 イノセンスの能力の性質及び訓練内容から、自らが人間を殺した、という強迫観念に駆られている。人の死を厭う傾向が見られるが、沢山の人間が命を落とす戦場から逃げ出すことはなかった」
と。




昔ならともかく、今の教団がこんな実験をするわけないですが!
(ごめんリーバー班長、濡れ衣着せた)

ミランダさんの能力の説明受けて私が一番最初に考えたのが、この話中で研究班がしたことでした。(ミランダさんのイノセンス発動して元気になれば生きてて、動かなければ死んでる、と区別がつくのかー。脳死判定なんかで使えれば便利だなー、なんて)

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