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ブックマンJr.の備忘録、管理番号:153 5

通し番号ふってますが、4からの続きというわけじゃないです。
まぁ、ミランダさんの性格考察も混じってるので、そのシリーズではあるかな。こういう時ラビ君の立ち位置は非常にありがたい。

そのうち当blogってば『黒の教団に黒歴史を追加しようサイトその3』(1,2番じゃないのは、もっと酷い歴史を考えてるサイトさんが絶対どこか他にあるから)なんて命名されちゃうんじゃないかしら。そんな感じのお話になると思います。

よろしければ続きをどうぞ。

 
 
ブックマンJr.の備忘録、管理番号:153 5


それは、とても素朴な疑問。次期ブックマンには相応しくないほどの。

「なぁ、じじー。イノセンスの適合者って、ホントに神に愛されてんのかさぁ」
「なんじゃい、藪からぼうに」
「だってさ~、...リナリー、もうスペインに送り出されたんだぜ? 腕の骨折治ったばかりなんに」
「ふむ」
「ユウは一昨日まで話もできない状態だったのに、昨日の昼にはピンピンしててさ。今朝早くにアメリカ行きの船に乗り込んでったし」
「遊び相手がいなくてすねとるわけか」
ブックマンとブックマン・ジュニアが兵士として黒の教団に迎えられて一年たった。人当たりの良い十六歳の少年が同年代の友人を作るには十分すぎる長さだ。
ドイツから届けられた昨日付けの新聞をめくるブックマンと背中合わせ、あぐらをかいたブックマン・ジュニアは書庫の奥で埃を被っていた五十年前の報告書を凄まじい速さで読み進めながら口を尖らせた。

「そうじゃねぇって。オレはブックマンになるから分かんねぇけど。普通、好きな相手って大切にするもんだろ。とりあえず、聖書はそう教えてる筈さ」
「悪を滅ぼすのをためらうなとも言うとるの」
深い考えもなく聖書を引っ張り出したのは不味かった。どれだけの知識を有するか見当もつかない師匠に一蹴される。かといって、ここで黙れば師の機嫌が悪くなると身に沁みて知っている。
なので、今度は慎重に言葉を選ぶ。
「バチカンの認めてきた奇跡って病を癒したり予言したりじゃん? AKUMAを破壊するしか能のない奇跡の欠片って」
「いたぞ、一人だけ」
出鼻を挫かれ、隻眼を瞬かせた。思わず振り返って老人の頭を見下ろす。
初耳だ。
問いかける口調は自然と疑わしげなものとなる。
「へ? 教団の書庫にはそんな記録」
「大体、八十年前になるかの。白き手のオレーシャ、最初で最後の癒しの能力を持ったイノセンスの適合者だ」
んん? 何かがラビの頭に引っかかった。が、意識に爪を立てる小さな刺が形になる前、始まったのは『ブックマンの記録』の伝承。
一言たりと聞き漏らすわけにはいかない。全神経を研ぎ澄ます。

「オレーシャが発見されたのは、ポーランドの外れ、ロシアに近い北の地だ。輝くプラチナブロンド、白とも見まごう淡い水色の瞳、典型的なスラブ美人と記憶しておる。
 彼女を見出したファインダーは...その当時はまだ探索部隊という組織はなかったが、まぁ、そういった仕事をしていた者だ....その男は、手をかざして自分の傷を治した彼女を聖女と讃えて黒の教団に連れ帰ったよ。寄生型のイノセンスの持ち主だったようだ。
 それから一年。
 まだ小さかった黒の教団の組織内に不協和音が鳴り響いた。
 人類を救うという崇高かつ危急な目的に向かっていた集団内で馬鹿げた小競り合い、いがみ合いが頻発した。その中心には何故かオレーシャがいた。....癒しの能力を持つエクソシストの周囲に争いが絶えなかったのは皮肉だな。
 そうこうするうち、彼女が娼婦だったという噂が流れ始めた。彼女は教団を内部から崩すために送り込まれた敵側の工作員ではないかという疑いも持ち上がった」
「....濡れ衣だったんさね? 『ブックマン』が知ってるってことは」
老人は答えない。ただ話を続ける。
「秘密裏に調査が行われた。すぐにオレーシャが複数の教団関係者と関係を持っていた事実が明らかになった」
「げ」
思わず漏れた少年の声は純粋な驚きからか、それとも嫌悪を含んでいたか。

「調査結果を突きつけられたオレーシャは悪びれず答えた。『寒いと震え寂しいと泣く人を慰めて、何が悪いの?』」
「何さ、それ?」
眉をしかめるラビを横目に、ブックマンは淡々と言葉を紡ぐ。
「『コソコソ調査なんてしなくても、聞いてくれれば正直に自分から話したのに』とも言った。彼女は、オレーシャは、十二の時から弟妹を養うために客を取っておった。十二といえば自我が芽生え始め他者との関係性を築くのに最も重要な時期じゃ。そんな時期に、彼女が他者....主に異性とのコミニケーションを図る唯一の方法は、金と引きかえに体を与えることだった。
 心理学が専門でなくても、その経験が彼女の思考様式へ与える影響がどんなものだか、想像するは容易い。違うか?」
理屈としてはその可能性を否定し難いが、感覚的にはどうにも受け入れ難い。無意識のうちに頭に手をやりながら、ラビは深く考えないでそう言った。
「でもさ、そういうのって世間体、悪いんじゃねーの? 男ならともかく」
「未来のブックマンともあろう者が世間の常識を疑いもなく受け入れてどうする。男が複数の女を同時に同程度愛するのは美徳で、女が複数の男を同時に同程度愛するのは悪徳か?」
「でもさ」
「ふん。誰を当てはめとる」
ぐ。
鼻で笑われ言葉に詰まる。一瞬、頬に朱が走った。
確かにラビが頭に描いた淫らな想像の当事者は、彼のよく知る少女の顔をしていた。
そんな未熟な弟子の様子を目だけでジロリと眺めた後、ブックマンは再び視線を新聞に戻し口を開く。ブックマンの語る記録の結末は決まっている。歴史から葬られた事実。その指し示す先。

「オレーシャは処刑された。教団に来てから約一年、一月後に十七の誕生日を迎える筈だった。処刑にはギロチンが使われたから死の苦しみは少なかった筈じゃ」
マダム・ギロチンヌ。
処刑される者の身分に関係なく、全ての者に等しく苦しみのない死を。
発明・改良した医師の崇高な理念は立派なものだ。それまでの断頭罪では処刑人の腕の巧拙により、死ねるまでの時間と苦痛は全く異なっていたのだから。
だがしかし。
「『人道的な処刑道具』?」
ラビの薄い唇が皮肉に歪む。ブックマンの表情は変わらない。
「格別の配慮、と言えんこともない。『魔女は火あぶり』が世間的なスタンダードじゃろうが」
けっ。
ツバでも吐くように嗤う。これでお仕舞いとばかり、目を報告書におとした。
と。

「その後十年間、適合者は一人として見つからなかった。バチカンは恐れ慄いた。もしかしたら、今いる十二人の適合者が最後の聖戦の士となるのかと。もう、これ以上の適合者は現れないのではないかと。黒の教団の各種組織が肥大したのは、この十年の間のことだ。AKUMAを倒せずとも貴重なエクソシストの盾になる人材を。サポートする方法を。
 どんな時でも最善を尽くすのは人間の美点というべきかの」
まだ記録は終わっていなかった。語り手の四分の一も生きていない聞き手は、言うべき言葉を持たない。黙って耳を傾ける。
「そして18xx年4月1日、十三人目の適合者が喜望岬で見出された。初めての黒人エクソシスト、エイヨ・ステファン。奴隷として北米へ売られるところをファインダーが...あぁ、これは記録に残っているか」
赤い頭がコクリと頷いた。今度こそ記録は終わった。
しん、と空気の鳴りそうなほどの沈黙を破ったのはラビ。どれほど過去を自らの内に刻みつけようと、すぐさま現在に思いが向かうのは未熟さと紙一重の若さ故。

「今現在のエクソシストは....クラウド元帥んとこの三人娘だろ、リナリーだろ、女は五人か。で男は~、イエェーガー元帥、ソカロ元帥とそこの三人、ティエドール元帥、ここはユウ含めて三人、クロス元帥とー、この人はこの前一人子ども見つけたって話で....十一人?」
いくらブックマンといえど世界中の人口は知らない。人口に対する男女比なんぞも把握していない。しかし、これは。
「まぁ、母集団の数が少ないからな。割合なんぞ大した意味を持たん。が、初期のエクソシストは十二人中、男は六人、女は五人、ほぼ半々と言えんこともないな」
「六足す五じゃ一足りない....あぁ、ヘブラスカか」
「あやつの性別は不明じゃからなぁ」
漂々とブックマンが口にしたことを疑う理由はラビにない。まさかこれより数ヵ月後、ルベリエ家の因縁を同一人物から聞かされようとは露とも思わず。

ただ、これまでの話を総合するに、不明とすること自体がヘブラスカは女だと言っているように思われるから厄介だ、予断などブックマンには不要でしかないのに、などと唸って片眉を下げた。

それからしばらくは二人とも黙々と自分の読書に励んでいたが、ブックマンが新聞を畳んでよっこらしょと腰を上げるに及び、ラビは尋ねずにいられなかった。

「なぁ、じじい。さっきの女のエクソシストが少ないって話さ、神の怒り、とかかさ? もしくは戦いに女は不要、とか? 普通に考えても、戦争は男のすることだもんな」
「阿呆。まっとうに考えて、女子どもが戦争に直接参加したら人類が滅びるからじゃ。そんなことも分からなくなるほど生物としてイカレとらんよ、人間は。
 エクソシストの男女比が不均衡な理由はもっと単純で、処女のみを調査対象としとるからだろう。別に規則に明記されとりゃせんが、暗黙の了解というやつでな」
「でも! イノセンスが適合すれば....」
「....オレーシャの記憶がある者は認めんよ。直接知る者は少なくなったが、人は自分の記憶や経験を他者に伝えるものだ。違うか、ブックマン・ジュニア?」
ブックマンの記録を受け継ぐ者よ。

釘をさされた気がしてラビは思わず首をすくめた。間をおかずパタンと扉の閉まる音。目をやれば老人の姿は見当たらない。
この時ようやっとラビは話の始まりで感じた違和感の正体に気づく。
そういえば、彼の師匠はオレーシャの話で一貫して年号も日付も正確な地名すら口にしなかった。まるで、祖父が孫におとぎ話や昔話でもするように、約八十年前、とだけ。

まさかねぇ。
八十年前と言えば、ブックマンはわずか七歳、関係者の筈がない。
プカリと浮かんだ突拍子もない思いつきは、頭を振るまでもなく雑多な物思いの底に沈んでいった。



ボヤボヤしてたらヘブラスカさんが本当に女の人だと判明! さっさと書き終えないと賞味期限が(笑)
そだ! ソカロ元帥さん、黒人もしくはアラブ人でしたね。肌にトーンが張ってあった。どこかのサイトさんが予想してて驚いた。

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