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ブックマンJr.の備忘録、管理番号:153 3

前回からの続きです。(そして、まだ続いちゃったりする)



ガタンという椅子の倒れる音で我に返った。振り払われた手を慌てて伸ばす。
「ゴメン、ミランダ!」
最悪だ。なに八つ当たりしてるんだ。
恥ずかしい。顔を上げられない。

縋りつくようにして細い腕を両手で掴んだ。(本当に細い。掴んでいるのは彼女の二の腕だというのに、ラビの指が余ってしまう)
「違うんさ、今言ったのは」
「いいえ、違わない、違わないわ! ラビ君の言ったことは本当よ!!」

必死に紡ごうとした言い訳を遮って、ミランダが叫びながら身を捩る。ラビの手を引き剥がそうと暴れるけれど、力の差がありすぎる。
ラビが目を上げた。動かない二の腕を支えに、うな垂れ手のひらで顔を覆う姿。何度も首を横に振る。

「違わない、違わないの。シンクロ率が上がって何日か続けて発動できるようになった時、『実地訓練をしませんか』て教会に連れて行ってもらって。
 最初は、お腹に大きな怪我をして運び込まれて来た人だったわ。何日間か発動し続けて、少しずつ時間の巻き戻しを解きながら怪我の治療をして。その人は傷が治って、そしてお礼を言ってくれたの。『ありがとう』て。
 わ、私、嬉しくて、あぁ、こんな風にアレン君たちを助けてあげられたら、て。最初の時この方法を知ってれば、アレン君とリナリーちゃんをあんなに苦しめずにすんだのにって」
「ミランダ」
「でも、段々と発動させる人の怪我が重くなっていって、発動時間も長くなっていって。
 ご、五人目の、人はもう、お医者様がダメだって首を振ったのに。この病気は治しようがないって。それなのに、私がイノセンスを発動させてしまって。少しずつ時間の巻き戻しを解いても、体力が少しずつ回復するだけで、発症してしまって病気の進行は止まらなくて。『死にたくない』て腕を掴まれて、殴られそうになって、周りの、周りの探索部隊(ファインダー)の人が抑えてくれて、それで、それで…」
「ミランダ、もういい、ゴメン、ミランダ」
「わ、私がいけないの。私が時間を巻き戻したりしなければ、あの人は死の苦しみを二度も味わわずにすんだ! 心穏やかに、神様の下へ逝けたのに!!」

ミランダは、ごめんなさい、ごめんなさいと謝り続ける。
ラビは呻いた。
あぁ、全く、頭の良い連中の考えそうなことだ。

発動訓練は適合者の自発的な意思に基づいて行わなければならない。イノセンスを活かすことができるのは、あくまでイノセンスに選ばれた適合者だけなのだから。
では、イノセンスの能力を適合者以外が利用したい場合、どうすればいい?

適合者と利用したい者との目的が一致すればいい。この場合は、『ケガを治す(もしくは病気を治療する)猶予を作り出す』。
ミランダの性格を考えれば、簡単に(ラビにすら)思いつける。

何度かの成功の後の失敗。この失敗は、『自発的な』彼女の意思によって引き起こされねばならない。その結果の罪悪感。

きっと、その五回目の失敗(=人間の死)の後は、研究班に言われるがままにイノセンスを発動したことだろう。償いの気持ちを込めて。
成功もしただろう。だが、成功と同じだけの『失敗』があった筈だ。
自ら「仮初の能力」と言わざるをえないほど。

そして得られた貴重なデータを教団は所有する。
この先、何かの役に立つのか、それとも、何の活用もされずに倉庫で埃をかぶることになるのか、ラビは知らない。

だが、この華奢で、恐がりの、優しい、よく泣く、体力のない、少し前まではAKUMAの存在も知らなかった女性が。歴史の闇に埋もれる実験の共犯者とされ。
自分の目の前で、泣き崩れているのは知っている。
「私と同じで何の役にも立たない」と膝を落としているのを知っている。
これほどに素晴らしいイノセンスを持ちながら。

実際、彼女のイノセンスはとてつもない可能性を秘めている。

巻き戻しの怪奇現象の報告書をラビは読んでいる。34回、同じ日付を繰り返した街。
イノセンスの発動が解け通常の時の流れが戻った時、34日分の疲労と記憶の蓄積を訴えた人間は皆無だったという。つまり、吸い取られた34日分の時間は『消えた』のだ。
この点に気づかない科学班ではない。だからあのような実験を行った。解明できれば、回復手段の選択肢を大幅に増やすことができる。
加えて、二日前に見せた発動空間の確定。
『奇怪』なとどいうレベルではない。まさしく、神のみが成し得る『奇跡』。(まぁ、イノセンスというのは、多かれ少なかれ奇跡の産物であり、生み出すものであるが)

だというのに。



続きます。(何だってこんなに長くなってんの) 続きはこちら

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